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【今、伝えたいこと】今、トランポリンが大ブーム “伝道師”廣田遥が語る魅力「跳べば笑顔になれる」

廣田さんは「トランポリンの持つポジティブな力」を発信したいと思っている【写真:松橋晶子】
廣田さんは「トランポリンの持つポジティブな力」を発信したいと思っている【写真:松橋晶子】

苦い北京五輪の記憶も「あの経験があったから、しんどい時期に前を向ける」

“トランポリンと言えば廣田遥”のイメージは未だに根強く、競技の第一人者として知られる廣田さん。現役時代は前人未到の全日本選手権10連覇を達成し、2004年のアテネ、08年の北京と2大会連続でオリンピックに出場した。

 長きにわたってトップに君臨し続けた廣田さん。大舞台に心身ともに万全に整える難しさは身に染みて知っている。それだけに1年延期が決まった東京五輪の話題になると一瞬、表情が曇った。自身にも苦い思い出がある。北京五輪の直前に恥骨の剥離骨折と右足の肉離れというアクシデントに見舞われていたからだ。

「私の場合は北京に合わせて、2000年から8年計画でメダルを狙ってやってきていました。ですが、直前の練習中に股関節を骨折。その状態でメダルを獲るのは難しくなった。そもそも本番で演技ができないかもしれないという状況でした。すぐに受け入れられるのかどうかはすごく難しい。でも、できないことにフォーカスしている時間がもったいない。できることが探したほうが未来は開けますから」

 8年計画の集大成の舞台へ向けて積み上げてきたものが、本番のわずか3週間に崩れ落ちた。結果はアテネ五輪の7位入賞を下回る、予選落ちの12位。その無念さや計り知れないが、廣田さんは決して下を向かなかった。

「究極の局面になった時にあの時のメンタルを思い出します。だから今でも辛い時期とか、しんどい時期に前を向けるんだなって。あの頃にできたんだからと、ポジティブな気持ちに切り替えられます」

 現役選手は今、何を思い、どう過ごすべきなのか。「う~ん」と逡巡し、言葉を選びながら続けた。

「モチベーションの維持って本当に難しい。早く切り替えられる選手と、引きずってしまう選手はどうしても出てくると思います。メダル候補とか、金メダル確実と言われている選手が今、すごく悩んでいるという話も聞きます。多くの選手が今年をピークに体づくりをしてきた。そこを来年にと、気持ちを切り替える自分なりのポイントや自分への励まし方を見つけてもらえることを願います。

 トランポリンに関しては練習できないのは大変なことです。空中で回転する感覚はほかではなかなかカバーできません。3日跳ぶのを休むと、1か月影響すると言われています。感覚を途切れさせないために、練習中の映像を見返したりしてイメージを持ち続けていてほしい。私も現役の頃は練習で跳んでいる時間が2時間半、イメージトレーニングにも1時間くらいかけていました」

 今、多くの練習場が閉鎖されている状況だが、跳べない期間に大事なのは“跳ぶイメージ”を持ち続けることだと説く。

「現役の選手が跳べていない状況だと聞いています。そういう時にできることは何なのか。自分なりには伝えています。どうしていいかわからない選手もいると思う。もし私だったら、自分の目標とする選手の映像を死ぬほど見ています。毎日研究して、その人の動きをインプットする。コピーするような感覚です。見てイメージトレーニングをする。トランポリンは本当にイメージが大事。できことに目を向けて、さらにバージョンアップできるように自分を自分で引っ張り上げていく事が必要な時期なのではと思います。生きていく以上、時間は流れていく。次にどうやっていくか。そちらに目を向けていってもらえたら良いなって思います」

 柔和な印象から時折、覗かせる強い意志。廣田さんはトランポリンの持つ力を信じ、日本中が笑顔になれる日を心待ちにしている。

■「HARUKA-ch」(廣田遥のYouTubeチャンネル)
https://www.youtube.com/channel/UCPnDdoyCkOh9U3cGkLsJu6A
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■廣田 遥(ひろた・はるか)

1984年4月11日、大阪府生まれ。12歳でトランポリンを始める。阪南大学在学中の2004年にアテネ五輪に出場し7位入賞。4年後の北京五輪で2大会連続出場を果たす。全日本選手権では2001年から10連覇を達成。2011年に現役引退。引退後はトランポリン指導者の他に、タレント、コメンテーターとしても活躍。

(THE ANSWER編集部・角野 敬介 / Keisuke Sumino)

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