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世界大会で5度優勝 スケートボード界の第一人者・瀬尻稜が東京五輪を目指さない理由

観客を魅了するプロスケートボーダーの瀬尻稜【写真提供:ARK LEAGUE 実行委員会】
観客を魅了するプロスケートボーダーの瀬尻稜【写真提供:ARK LEAGUE 実行委員会】

スケートボード界が誇るダイバーシティ「共通言語はスケボーなんですよね」

 勝つことよりも楽しむことを重視するようになった根底には、日本人スケーターにとって未知の舞台を切り拓いてきた経験が大きく影響しているのかもしれない。今では国際大会に数多くの日本人スケーターが参加するが、瀬尻が参加し始めた頃は日本人はもちろん、アジア人が1人という状況も珍しくはなかった。

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「当時は日本人は1人っていうのが当たり前。認めてもらうまでは大変でしたね。苦労もしました。会場に行っても言葉が喋れない。優しいスケーターが声を掛けてくれて、なんとなく仲良くなるけど会話はできなくて、練習が終わったらバイバイみたいな。本当に仲のいい友達がなかなかできない時期が何年かあって、それでも大会に出続けたら少しずつ英語も分かるようになって、ようやくコミュニケーションを取れて少しずつ認めてもらえた。もし自分がきっかけで海外に出るスケーターが増えたんだったらうれしいですね」

 コミュニケーションを取ることと同じくらい、いや、それ以上に大切なのはやはりスケートボードの上手さだ。スケートボードで評価の基準となるのはスキルに加え、クリエイティビティ(創造性)とオリジナリティ(独創性)。日本から1人で乗り込んできた瀬尻の滑りは、海外の熟練たちの目を惹きつけた。

「やっぱりスケボーがヤバくないと認めてもらえないし、それは当たり前。だから、スケボーでかまさなきゃって思ってました(笑)。例えば、フランスの大会に行ったらヨーロッパ中からいろんなスケーターが来て、ブラジルやアメリカからも来る。それぞれ喋る言葉は違うけど、結局スケーターなんで共通言語はスケボーなんですよね。だから、スケボーしながら仲良くなって、大会で結果出したり、上手ければ認めてもらえる。当時は自分ができるスケボーを最大限だそうってことしか考えていなかったんですけど、後から考えてみるとスケボーが全部を繋いでくれていたなって思いますね」

 昨年発表された南カリフォルニア大の調査によると、スケートボード文化の特徴として国、人種、性別、年齢などで差別しないダイバーシティ(多様性)があるという。それは瀬尻も「めちゃくちゃ感じます」と話す。

「日本にいて感じるのは、日本人はキッチリ真面目でしっかりしている人が多くて、アメリカに行くと結構適当な人が多い。でも最近、アメリカの方が適当だけどみんな自由に生きていて、日本人はちゃんとしているけど枠にはまった生き方をしているような気がしていて。自分の場合、スケボーがそういうものを全部取っ払ってくれた気がします。スケボーはもちろん上手いヤツが認められるんだけど、もし上手くなくても、その人が自分にとって限界の技に挑戦していたらみんな応援してくれるし、自分が当たり前にできる技でも、なかなかできなかった人がメイクした瞬間はみんなで喜ぶし。そういう風に、みんな違っていいんだって個性を認めてくれるのを、スケボーをやっていると世界中どこに行っても感じますね」

 もしスケートボードに出会っていなかったら……。そんな自分は想像できないという瀬尻。「いろんな競技があるけど、スケボーで良かったなって心の底から思います」と語る23歳は、近い将来、日本でもスケートボードが文化として根付くことを願っている。

「10年後とか、普通に子どもが公園でスケボーする姿を見られたらうれしいですね。そのきっかけになれればいいと思います」

(THE ANSWER編集部・佐藤 直子 / Naoko Sato)

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