部活に必要な“厳しさ”とは? 78歳バレー名将が持論、中学生の「頭をつくる」重要性
“頭”ができればフィジカルもスキルも向上する
練習は過酷だが、選手は音を上げない。血となり肉となるのを理解しているからだ。主将の桜沢柚希は「厳しい先生だけど、いろんなことを経験されているのでしっかり学べば上手くなると思う。尊敬しています」と話し、アウトサイドヒッター(対角エース)の中西智哉は「先生の指導を受けてからメンタル面が強くなり、技術的にはレシーブが上手くなりました。でも練習はきつい」と苦笑する。今季の目標を尋ねると「富士見西を倒して県大会で初優勝すること」と口を揃えた。
鶴ヶ島市教育委員も務める萩原さんの指導方針は、人間づくりにある。「将来に役立つ人間形成を第一に考えているので、無理難題をお願いしても保護者の方に理解してもらえるのではないか」と教育者としての顔ものぞかせる。
桜中の14人の選手はアザレアのアカデミーにも所属し、部活動とは別に練習している。
日本中学校体育連盟は3月4日、部活動所属選手に認められている全中への出場資格について、民間のスポーツクラブ員にも開放し、参加を承認した。部活動とクラブの両方に関わる萩原さんの行動は、こんな動きを先取りしたものと言える。
全日本柔道連盟は3月18日、「心身の発展途上にある小学生の大会で、行き過ぎた勝利至上主義が散見され、好ましくないものと考える」とし、今年から個人戦の全国小学生学年別柔道大会を廃止すると発表した。
この決断に共感する萩原さんは、「中学生だって勝つことだけを追求するのはどうでしょうか。この年代は県単位でトップになり、全国にたくさんの王者をつくっておくくらいがちょうどいい」と述べる。
教えることの喜びは、選手の成長を感じる時で、難しいのが指導者のあるべき姿を模索しても、答えが見つからないことだという。
「ずっと勉強ですね」と自らに言い聞かせるように話すと、「メンタル、フィジカル、スキルをバランス良く教えないといけないが、定理、公理、無理の中でなぜ無理をするのかという“頭”をつくることが最も重要。“頭”ができればフィジカルもスキルも向上する、というのが私の指導の原点です」と萩原さん。足、腰が効かなくなるまで現場に通い続け、育成に力の限りを尽くすそうだ。
(河野 正 / Tadashi Kawano)