子供に結果を求めたがる保護者たち 東京の保育園がスポーツで育てたい「本物の意欲」
東京2020をきっかけに持ちたい「なぜ、その競技が行われるか」という視点
――競技特性を考える上では、東京オリンピック、パラリンピックという日本国民がスポーツについて触れる絶好の機会が来年に迫っています。
丸山「一つ危惧してきたのは競技の歴史は語られても、その競技がなぜ行われ、どんな特性があるかという側面は語られたことがないこと。そういう中で、スポーツをどう人間教育と結び付け、解釈していくか、会社としてやっていきたい。今回のプロジェクトを通じ、園長、保育士、親御さんたちに伝えて、親御さんが東京2020を迎えた時、『この競技はすることは、どんな意味があるんだろう』という目線まで向いてほしい。結果として『自分の子はこういうスポーツに向いているな』『思いやりが少し足りないからチームスポーツで育もう』という東京2020になってもらえると嬉しいですね。そうなると、スポーツがただの勝ち負けの手段ではなく、人間教育の手段として活用していってもらえる。特に保育・学校などの指導の現場で伝えていきたいです」
――伊藤さんはスプリント指導のプロ組織「0.01 SPRINT PROJECT」を主催し、小学校世代に多く指導していますが、今回はどんな思いで指導に協力したのでしょうか。
伊藤「僕は日常的に関わる先生ではないので、できるだけ一回のインパクトが大事。『普段と違う人が来た』『なんか凄そうな人だ』と思ってもらえることは一つの価値にある。それによって興味、関心を持たれ、普段と違った取り組みをすることで子どもたちに気づきが生まれる。もう一つはポイントを絞って、わかりやすく伝えること。子どもはもちろん、その後に先生が使えるような状態で“お土産”を残して帰る。僕らの価値はこの2つかなと思います。
今回、僕としては必ずしもスポーツ選手になってほしいわけでもない。体験の選択肢として、かけっこが増えたことが良かったと思っている。その中でポイントを理解して自分なりに努力したら、より成果につながるという気づきも得られるし、やったことないことでも実際やってみたら案外面白かったという経験も重要。そんな経験があれば、新しいことにチャレンジしていける子どもになり、自分の能力を高めることにも直結するんじゃないか。そんな体験が提供できていたら僕も嬉しいです」
――今回、こうしてスポーツを通じた幼児教育に取り組まれていますが、一方で最近は施設が少なかったり、公園で遊びにくかったり、子どもの運動環境の縮小という現実があります。その点はどう捉えているのでしょうか。
丸山「環境要因は仕方ないと思う部分はある。もちろん、だだっ広い場所で走ったり飛び回ったり、ボールを蹴ったり投げたりさせてあげたい。でも、現実的にそういう場が少ない。既存の固定概念に捕らわれ、サッカーは105メートル×68メートルの広さがなれけばできないと考えるのではなく、10メートル×10メートルでも人数を減らすことで得られるメリットがあるんじゃないか。
今回、協力してくれている指導者の方たちもフレキシブルに会場の広さによって教え方を変え、工夫することで本質的なエッセンスを伝えてくれている。デメリットに思えることをデメリットに捉えるのではなく、そこからできることは何なのか、そこだから伝えられることがあるんじゃないか。そんなアプローチが、変化に対応していくという意味では大事ではないかと思います」