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箱根駅伝優勝6回、青山学院大・原晋監督と“選手主体”の指導論 20年前は「むしろ君臨型だった」

チーム理念を実現するための行動指針3か条

 原監督が最も重視しているのは、チーム理念である。それは「箱根駅伝を通じて社会に役立つ人材を育成する」ことであり、就任当初から今日まで変わることはない。

 そして、それを実現するために行動指針の3か条を設けている。

1.『感動を人からもらうのでなく、感動を与えることができる人間になること』
2.『今日のことは今日やろう。明日はまたやるべきことがある』
3.『人間の能力に大きな差はない。あるとすれば熱意の差』

 この3か条の総論を受けて、その時々のチームの状態、選手の能力を鑑みながら理念の達成に近づけていく。2004年に監督として青学大に来てから、しばらくはチーム理念と行動指針に対しての選手の意識が低かった。そのため、監督が選手たちを引っ張る部分が多く、時に選手からの反発を受けながらも、根気強く基盤を固めてきた。

 原監督が掲げるチーム理念を選手自らが理解し、行動に移せるようになったのは、選手が入れ替わる4年を1周期とすると「2周期、それにプラス2年くらい。ちょうど指導から10年目くらい」と振り返る。

 その頃から自然と選手とは双方向でのやり取りが増えていったという。理念を浸透させることは、それだけ時間がかかることの証左だろう。

 チームの実績を照らし合わせると、就任5年目に33年ぶりの箱根駅伝出場、8年目に学生3大駅伝の1つである出雲駅伝で初優勝、そして11年目に箱根駅伝で初優勝と、チーム理念の実現度合いと比例する形で結果が伴ってきたと見ることもできる。一朝一夕で、今の青学大ができ上がってきたわけではないのである。

「今は、20年前に比べて楽というか、チームの方向性が正しい方向にいっているかを(選手との)距離感を保ちながら、俯瞰して見ることができます。昔はもっと近い距離で指導に当たっていたわけですが、ただ君臨型、対話型とバチッと分かれるものではなく、個人の性格や時期によって使い分けるものと考えたほうが良いかもしれません。

 チームのルールを守るなど、やるべき最低限のことはやらせます。その当たり前の基準が低くなると、組織としての意識が下がってしまうからです。選手たちが自ら当たり前のことを当たり前にやれるように、そしてチームの理念に自ら向き合えるようになるまで、2周期くらい要したということです」

 大きな目的はあくまでチーム理念の実現であり、そのためにはどのように選手たちに行動させるべきなのか。原監督は自身の経験から、状況に応じた指導スタイルを取ることの重要性を訴える。

(牧野 豊 / Yutaka Makino)

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牧野 豊

1970年、東京・神田生まれ。上智大卒業後、ベースボール・マガジン社に入社。複数の専門誌に携わった後、「NBA新世紀」「スイミング・マガジン」「陸上競技マガジン」等5誌の編集長を歴任。NFLスーパーボウル、NBAファイナル、アジア大会、各競技の世界選手権のほか、2012年ロンドン、21年東京と夏季五輪2大会を現地取材。22年9月に退社し、現在はフリーランスのスポーツ専門編集者&ライターとして活動中。

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