[THE ANSWER] スポーツ文化・育成&総合ニュースサイト

「高校生とは思えない」人間力はいかに磨かれたか 部活の枠を超えた主将の姿に賛辞

発足からわずか3年で、全国高校サッカー選手権の舞台にあと一歩と迫ったチームがある。淡路島を拠点に活動する兵庫県の相生学院高校サッカー部は、県大会決勝で滝川第二高校に0-1で敗れたものの、強豪相手に互角の攻防を演じた。彼らはいかにして、その場所へと駆け上がったのか。存在感のあるプレーと振る舞いでチームを束ね、ピッチ外でも“人間力”を高め続けたキャプテンの姿を追った。(取材・文=加部 究)

相生学院高校サッカー部で主将を務める白倉琉聖【写真提供:相生学院】
相生学院高校サッカー部で主将を務める白倉琉聖【写真提供:相生学院】

連載「高校サッカー革命児たちの3年」第3回、注目を集めたキャプテン白倉琉聖の姿

 発足からわずか3年で、全国高校サッカー選手権の舞台にあと一歩と迫ったチームがある。淡路島を拠点に活動する兵庫県の相生学院高校サッカー部は、県大会決勝で滝川第二高校に0-1で敗れたものの、強豪相手に互角の攻防を演じた。彼らはいかにして、その場所へと駆け上がったのか。存在感のあるプレーと振る舞いでチームを束ね、ピッチ外でも“人間力”を高め続けたキャプテンの姿を追った。(取材・文=加部 究)

   ◇   ◇   ◇

 全国高校サッカー選手権兵庫県予選を戦い抜いた相生学院で、ひと際注目を集めたのはキャプテンの白倉琉聖だった。厳しい状況でも笑みさえ湛えて仲間を落ち着かせ、インタビューにも堂々と対応。しかし決勝戦で敗れた瞬間に号泣する姿を見て、SNSを通じて「一緒に泣けた」「本当に感動した」という声が相次いだ。

 白倉の人間性を称える声は絶えない。相生学院に練習参加に来た父兄に、同校の説明をするのは主将の役目になっている。

「どっしりと構え、落ち着いてハキハキと、しかも選手の気持ちに寄り添って話してくれる。とても高校生とは思えない。本当に人として頼もしいですね」

 誰もが感心して帰っていく。

 相生学院のプロジェクトを発案し、チームの総監督を務める上船利徳が力説する。

「人間力がつくとプレーもこんなに伸びていく。僕も改めて琉聖にそれを教わりました」

 実は東京で実施した入学前の練習に同行した時から、白倉の姿は目に留まった。太めな体型とは裏腹に意外なほど機敏に動く姿が、明らかに異質だった。

 当時、上船は話していた。

「アイツ、身体が絞れれば面白いと思うんですよ」

 中学時代に学級委員長を務め、相手の目を見てしっかりと話す白倉は、高校でも入学するなりキャプテンに選ばれた。だがプレーに目を転じれば、最初から中心選手だったわけではなかった。春先にはスタメンから漏れ「どうしたら試合に出られるんですか」と、泣きながら上船に問いかけてきたという。

1 2 3

加部 究

1958年生まれ。大学卒業後、スポーツ新聞社に勤めるが86年メキシコW杯を観戦するために3年で退社。その後フリーランスのスポーツライターに転身し、W杯は7回現地取材した。育成年代にも造詣が深く、多くの指導者と親交が深い。指導者、選手ら約150人にロングインタビューを実施。長男は元Jリーガーの加部未蘭。最近、選手主体のボトムアップ方式で部活に取り組む堀越高校サッカー部のノンフィクション『毎日の部活が高校生活一番の宝物』(竹書房)を上梓。『日本サッカー戦記~青銅の時代から新世紀へ』『サッカー通訳戦記』『それでも「美談」になる高校サッカーの非常識』(いずれもカンゼン)、『大和魂のモダンサッカー』『サッカー移民』(ともに双葉社)、『祝祭』(小学館文庫)など著書多数。

W-ANS ACADEMY
ポカリスエット ゼリー|ポカリスエット公式サイト|大塚製薬
DAZN
ABEMA
スマートコーチは、専門コーチとネットでつながり、動画の送りあいで上達を目指す新しい形のオンラインレッスンプラットフォーム
THE ANSWER的「国際女性ウィーク」
N-FADP
#青春のアザーカット
One Rugby関連記事へ
THE ANSWER 取材記者・WEBアシスタント募集