「高校生とは思えない」人間力はいかに磨かれたか 部活の枠を超えた主将の姿に賛辞
発足からわずか3年で、全国高校サッカー選手権の舞台にあと一歩と迫ったチームがある。淡路島を拠点に活動する兵庫県の相生学院高校サッカー部は、県大会決勝で滝川第二高校に0-1で敗れたものの、強豪相手に互角の攻防を演じた。彼らはいかにして、その場所へと駆け上がったのか。存在感のあるプレーと振る舞いでチームを束ね、ピッチ外でも“人間力”を高め続けたキャプテンの姿を追った。(取材・文=加部 究)
連載「高校サッカー革命児たちの3年」第3回、注目を集めたキャプテン白倉琉聖の姿
発足からわずか3年で、全国高校サッカー選手権の舞台にあと一歩と迫ったチームがある。淡路島を拠点に活動する兵庫県の相生学院高校サッカー部は、県大会決勝で滝川第二高校に0-1で敗れたものの、強豪相手に互角の攻防を演じた。彼らはいかにして、その場所へと駆け上がったのか。存在感のあるプレーと振る舞いでチームを束ね、ピッチ外でも“人間力”を高め続けたキャプテンの姿を追った。(取材・文=加部 究)
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全国高校サッカー選手権兵庫県予選を戦い抜いた相生学院で、ひと際注目を集めたのはキャプテンの白倉琉聖だった。厳しい状況でも笑みさえ湛えて仲間を落ち着かせ、インタビューにも堂々と対応。しかし決勝戦で敗れた瞬間に号泣する姿を見て、SNSを通じて「一緒に泣けた」「本当に感動した」という声が相次いだ。
白倉の人間性を称える声は絶えない。相生学院に練習参加に来た父兄に、同校の説明をするのは主将の役目になっている。
「どっしりと構え、落ち着いてハキハキと、しかも選手の気持ちに寄り添って話してくれる。とても高校生とは思えない。本当に人として頼もしいですね」
誰もが感心して帰っていく。
相生学院のプロジェクトを発案し、チームの総監督を務める上船利徳が力説する。
「人間力がつくとプレーもこんなに伸びていく。僕も改めて琉聖にそれを教わりました」
実は東京で実施した入学前の練習に同行した時から、白倉の姿は目に留まった。太めな体型とは裏腹に意外なほど機敏に動く姿が、明らかに異質だった。
当時、上船は話していた。
「アイツ、身体が絞れれば面白いと思うんですよ」
中学時代に学級委員長を務め、相手の目を見てしっかりと話す白倉は、高校でも入学するなりキャプテンに選ばれた。だがプレーに目を転じれば、最初から中心選手だったわけではなかった。春先にはスタメンから漏れ「どうしたら試合に出られるんですか」と、泣きながら上船に問いかけてきたという。