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「高校生とは思えない」人間力はいかに磨かれたか 部活の枠を超えた主将の姿に賛辞

地元淡路島の人たちと自ら率先して交流

 ジュニアユース(中学)は、安部裕葵(鹿島アントラーズ→バルセロナ)らを輩出した東京都のS.T.FC出身。チームは全国大会に出場したが、自身はベンチから試合を見つめた。

「きっと中学時代の同級生たちは、兵庫県決勝の舞台をボランチの超中心選手として戦う琉聖の姿を絶対に想像できていないはずです」(上船)

 だが90キロあった体重を10キロ落とすと、それからはFW→センターバック→ボランチと中央のポジションをすべてこなし、チームに不可欠な存在として定着していく。もちろん、全体を牽引するキャプテンとしての信頼も、ますます揺るぎないものになっていった。

「琉聖は与えた分だけすべてを吸収していく。プレー面でのアドバイスはもちろん、プロ選手や経営者の方々のセミナーを通じて『愛される人間になるには』『人間として成長していくためには』などというテーマを吸い上げ、咀嚼してきた。指示待ちではなく自分からチャレンジ、行動することも意識し、僕が知らないうちに淡路市長をはじめ面白そうな人がいたら、勝手にアポを取って話を聞きに行ったりするようになりました。そうやって人生を学んできたんです」

 午後の自由時間を利用して、近所を一軒一軒訪ねて地元淡路島の人たちに自分たちの活動を説明して回る。地域密着を目指すJクラブのスタッフが考案するような活動を、独自に捻り出して実践し、必然的にコミュニケーション能力も磨かれてきた。

 一方、上船も目覚ましく成長していく白倉が仲間から全幅の信頼を寄せられているのを知りながら、敢えて試練を課すこともあった。

 ある公式戦の時だった。相生学院では、ウォームアップも含めて試合前の準備は選手たちが主体的に行っている。もちろんキャプテンの白倉は、真っ先に到着しキックオフの時間から逆算して、てきぱきと行動をしていた。だが他の部員たちが、時間に遅れてくるなど緩みが顕著だった。そこで上船は全員に向けて伝えた。

「おまえらのキャプテンは白倉じゃないんだな。だってみんなついていっていないし、それは信頼していない、ってことだよな。だったら(キャプテンを)外すよ。白倉も自分だけ良くても、みんながついてこなければチームは勝てない」

 こうして上船は、本当に白倉をキャプテンから外した。しかし白倉は、それまでと変わらず黙々と率先垂範で行動を続けた。また、これで危機感を覚えた他のメンバーも、「みんなでやろう」と責任を共有するようになった。

 それを確認して上船も、選手権予選の開幕前には再びキャプテンマークを渡すのだった。

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加部 究

1958年生まれ。大学卒業後、スポーツ新聞社に勤めるが86年メキシコW杯を観戦するために3年で退社。その後フリーランスのスポーツライターに転身し、W杯は7回現地取材した。育成年代にも造詣が深く、多くの指導者と親交が深い。指導者、選手ら約150人にロングインタビューを実施。長男は元Jリーガーの加部未蘭。最近、選手主体のボトムアップ方式で部活に取り組む堀越高校サッカー部のノンフィクション『毎日の部活が高校生活一番の宝物』(竹書房)を上梓。『日本サッカー戦記~青銅の時代から新世紀へ』『サッカー通訳戦記』『それでも「美談」になる高校サッカーの非常識』(いずれもカンゼン)、『大和魂のモダンサッカー』『サッカー移民』(ともに双葉社)、『祝祭』(小学館文庫)など著書多数。

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