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なぜ「高額な月謝」でも人が集まるのか 日本一を目指す育成クラブの緻密な“価値提供”

「金満クラブ」と揶揄されても…「それはマーケットが判断すること」

 小学生は75分間のトレーニングを週に3度。週末に試合をしても、プレー時間は計300~350分間以内に収まる。

「シーズン初めには、必ず我々の考え方を伝えて親御さんにも理解して頂いています。夏休みはどうしても2週間しか取れていませんが、将来は1か月間は確保したい。欧州は2~3か月間取っているわけで、バカンスを終えると体が大きくなって戻ってきます。トレーニング時間と休養が適切なら大きくなる。それをデータ化して証明したいですね」

 少数主義のメリットを活かし、日本では難しかった「6-3-3」制の垣根を壊し、積極的に飛び級を推進している。

「現在千葉県には約250のU-18チームがあり、内訳は高体連が240でクラブは8つ。ウチは現在3部リーグですが、それでも上位50チームには入っている。でも選手は3学年合わせても14人しかいないので、中学生がスタメンで試合に出ている。小学生でも中学の試合に出る子がいるし、今度は高校生がトップチームに出ていくことになるでしょう。高校の部活から移籍してきた子もいますが、もう楽しくて仕方がないのが伝わってきます。やはり選手は、自分の力に適したチームでプレーするべきなんですよ」

 ネット上では「金満クラブ」と揶揄されることもある。しかし幸野は、まるで気に留める様子はない。

「それはマーケットが判断することです。ウチが高い月謝に相応しくないクラブなら、選手がいなくなるわけですから。でも現状に奢らず、これからも日本で最高の環境を目指していきます」

 常に幸野は、Jを超える幸せなクラブのビジョンを描いている。(文中敬称略)

[プロフィール]
幸野健一(こうの・けんいち)

1961年9月25日生まれ。7歳よりサッカーを始め、17歳の時にイングランドへ渡りプレーした。現在は育成を中心にサッカーに関わる課題解決をはかる「サッカー・コンサルタント」として活動。2014年に「アーセナルサッカースクール市川」を開校させ、代表に就任。19年に「FC市川GUNNERS」にチーム名変更、20年3月から業務提携した市川SCのGMに就任した。息子の志有人はJFAアカデミー福島1期生のプロサッカー選手で、09年U-17W杯に出場した。

(加部 究 / Kiwamu Kabe)

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加部 究

1958年生まれ。大学卒業後、スポーツ新聞社に勤めるが86年メキシコW杯を観戦するために3年で退社。その後フリーランスのスポーツライターに転身し、W杯は7回現地取材した。育成年代にも造詣が深く、多くの指導者と親交が深い。指導者、選手ら約150人にロングインタビューを実施。長男は元Jリーガーの加部未蘭。最近、選手主体のボトムアップ方式で部活に取り組む堀越高校サッカー部のノンフィクション『毎日の部活が高校生活一番の宝物』(竹書房)を上梓。『日本サッカー戦記~青銅の時代から新世紀へ』『サッカー通訳戦記』『それでも「美談」になる高校サッカーの非常識』(いずれもカンゼン)、『大和魂のモダンサッカー』『サッカー移民』(ともに双葉社)、『祝祭』(小学館文庫)など著書多数。

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