選手が靴をオーブンで温めるワケ 中野友加里が語る「フィギュアスケートと靴」の秘密
選手がテープを巻いて出場する意味とは
――練習を積めば積むほど、靴に負荷もかかるわけですね。
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「もちろん、選手によって個人差はあります。早い人は半年で替えます。いくら自分の足型で作ったとしても、人が作ったものなので多少のズレが生まれ、どうしても合う、合わないが出てきてしまいます。そのズレによって、ちょっとの体重のかけ方でジャンプが跳べなくなったり、上手く滑れなくなったりする。フィギュアスケートの靴はとても繊細です。『ああ、靴が合わないな』という選手のコメントを聞いたら、そういう状態にいます」
――かつては織田信成さんがバンクーバー五輪のフリーの演技直前にひもが切れたことが当時話題となりました。紀平梨花選手は靴をテープで巻き、自分の感覚に合わせるために調整するシーンを見たことがあります。
「靴は技術面に与える一番影響が大きいものだと思います。そのくらい本当に繊細です。私もテープを使っていました。アイスホッケー選手が使うテープで、アイスホッケーの専門店で買っていました。皆さんが普段履いている革靴も時間が経つとどんどん柔らかくなっていきます。そうなると、履きやすさは増すと思いますが、フィギュアスケート選手の場合は別のことが起きるんです」
――どんなことでしょう?
「足首が曲がりすぎてしまい、衝撃に耐えられなくなってしまう。もしくはケガにつながるケースもあります。その補強のために足首周りを固定するテーピングをするんです。固くすることで、柔らかくなった靴はジャンプなどの衝撃に耐えてくれます。柔らかくなったからすぐに替えたいけど、シーズン途中だと靴を替えることに勇気がいるでしょう。変える時間がなければ応急処置という形でテープを使います。
織田さんは靴ひもが切れていたものを(切れ目部分を)縛って使っていました。靴ひもを替えるだけでも靴を履く感覚は変わるものです。私も靴ひもが切れたら、しばらく縛って使っていたので、替えるタイミングをすごく考えていました。ただ、演技の最中に取れる可能性もあるので危険です。なので、大会直前にタイミングが重ならないように見計らって靴ひもを替えていました」