出産した女性アスリートの実体験 夜中の授乳なく「すごく親孝行」、困るのは合宿中の預け先――レスリング・金城梨紗子
「THE ANSWER」は3月8日の国際女性デーに合わせ、さまざまな女性アスリートとスポーツの課題にスポットを当てた「THE ANSWER的 国際女性ウィーク」を今年も展開。「スポーツに生きる、わたしたちの今までとこれから」をテーマに1日から8日までアスリートがインタビューに登場し、これまで彼女たちが抱えていた悩みやぶつかった壁を明かし、私たちの社会の未来に向けたメッセージを届ける。2日目はレスリングで五輪2連覇の金城梨紗子(サントリービバレッジソリューション)が登場。
THE ANSWER的 国際女性ウィーク2日目「出産・育児」金城梨紗子インタビュー後編
「THE ANSWER」は3月8日の国際女性デーに合わせ、さまざまな女性アスリートとスポーツの課題にスポットを当てた「THE ANSWER的 国際女性ウィーク」を今年も展開。「スポーツに生きる、わたしたちの今までとこれから」をテーマに1日から8日までアスリートがインタビューに登場し、これまで彼女たちが抱えていた悩みやぶつかった壁を明かし、私たちの社会の未来に向けたメッセージを届ける。2日目はレスリングで五輪2連覇の金城梨紗子(サントリービバレッジソリューション)が登場。
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今回のテーマは「女性アスリートと出産・育児」。スポーツ界も結婚・出産を経て、育児をしながら競技生活に励むアスリートが増えつつある。金城もその一人。2連覇を達成した東京五輪翌年の2022年5月に第1子を出産。産後7か月後で全日本選手権優勝を達成したが、復帰を決断し、トレーニングに取り組んできた過程にはさまざまな葛藤があったという。後編では、練習再開後に起きた体の変化、育児と競技を両立する喜びと悩み、最愛の娘に対する想いも語った。(取材・文=長島 恭子)
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2016年リオ五輪、2021年東京五輪と2大会連続で金メダルを獲得した、女子レスリングの金城(旧姓・川井)梨紗子。彼女は東京五輪後、競技引退を考えていたが、妊娠を機に現役続行を決意。2022年5月に長女を出産すると、同年12月の全日本選手権で優勝。圧巻の復活劇をみせた。
彼女が復帰に向けた体作りをスタートさせたのは、産後の1か月後。それを考えると、わずか半年で、日本を制する状態にまで戻したことになる。
「産後の1か月検診時に医師から、運動の許可が下りました。『でも、いきなりレスリングはしないでね』と言われ(笑)、ウォーキングやゆっくりペースのジョギングから始めました」
出産前から、国立スポーツ科学センター(JISS)の女性アスリート支援プログラムのサポートチームとも連携。出産前の体組成と比較しながら調整を進めたが、体作りは呼吸法による、骨盤底筋群のトレーニングからのスタートだった。
「それこそ最初は呼吸法以外は禁止でした。私にとってはウエイトを使い、ガンガンに筋肉を鍛え『あーキツイ!!』って感じるのが『トレーニング』です。苦しくもない呼吸法だけで、本当に足りるのかなと、不安に思うこともありました。でも、サポートしてくださる方たちは皆さん、プロフェッショナル。信じて続けるしかないと、ひたすら我慢して取り組んでいた、という感じです」
出産の影響で、一時は子どもの頃から当たり前にできていた前転・後転さえもできない体になった。そのうえ、待っていたのは地味なトレーニングをひたすら続ける日々。金城のなかで「選手として本当に大丈夫なのか」という不安と「人ってこんなに体が変わるんだ」という面白さがせめぎ合ったが、次第に面白さが上回ってきたという。
「当たり前のことができない事実を目の当たりにして、体ってこんなに変わるのかと、肌で感じました。そう考えると、やっぱり子ども一人をお腹で育てて出産すること、それができる女性の体ってすごいんだなと、思うようになって。不安よりも『これから、どう変わっていくのか』という楽しみしかなくなりました。だって、これだけ何もできないのだから、後は伸びしろしかないでしょう。我ながらポジティブだなーとは思いますが、その変化が楽しみなんです」