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失意の五輪5位、一度は離れた大好きなスキー 19歳川村あんりに再び板を履かせた「限界」への探求心

モーグルの魅力に改めて気づいた【写真:回里純子】
モーグルの魅力に改めて気づいた【写真:回里純子】

練習ができなくなった北京五輪直後、再起のきっかけとなったこととは

 川村は3歳でスキー、4歳でモーグルを始めた。世界で注目を浴びたのは15歳の時。初めて出場したワールドカップ(W杯)で世界2位になった。

「当時はW杯という大会が何かもわかっていなかった。大好きなスキーを滑り続けて、気づいたら表彰台に乗っていた、という感じ」

 そして、北京五輪を控えた2021年12月、W杯で初優勝。日本の女子選手では上村愛子以来となる優勝を決め、金メダルの期待も俄然、高まった。

「五輪では限りなく完成に近い状況に持っていき、試合をしたかった。モーグル以外のすべてを投げ捨てて、詰めて、詰めて、練習をして過ごしました」

 子どもの頃から憧れていた五輪。十分な準備と気合いで臨んだ結果は5位入賞。金メダルを目標に取り組んできた川村にとって、目標と結果の乖離に「何て説明したらいいのかわからない」ほどのショックを受けた。

「自分を尽くしたけれど、求めた結果が出なかった。夢見た表彰台が、本当に一瞬で現実にならなかったギャップに『あー……』という感じが続きました。

 うまく言えませんが、現実感がなく、ただ日々が過ぎていく、みたいな。五輪でのメダルをゴールに設定しすぎて、モーグルで何を目指すのか一気にわからなくなってしまいました」

 うまくいかないときはいつも、練習量を増やしたり、まったく違うことを取り入れたりすれば、自ずと突破口が見つかった。でも五輪後は違った。

「『このまま続けて、私は何が変わるんだろう?』と思うようになって……。モーグルを続ける意味を見失い、練習ができなくなりました」

 五輪で受けたショックは、しばらくスキーと離れて過ごすことで、徐々に薄れていった。「自分は今後、何をしていきたいのか」。そう自分に問いかけ続けるうちに、進むべき道を取り戻した。

「突き詰めると私は、自分の限界を自分で決めず、どこまでやっていけるのかを知りたいんですね。そう思い至ったときシンプルに、あ、やっぱりモーグルがやりたい、もっとうまくなりたいって思いました」

 川村にとってのモーグルの魅力は、想像以上に自分の限界を突破できることだと言う。

「モーグルは『イメージ通りの滑りがどこまでできるのか』というゴールのない世界。自分の体一つで、どんなスゴイことができるのか、周りを魅了することができるのか。それが、面白さであり、魅力です」

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長島 恭子

編集・ライター。サッカー専門誌を経てフリーランスに。インタビュー記事、健康・ダイエット・トレーニング記事を軸に雑誌、書籍、会員誌で編集・執筆を行う。担当書籍に『世界一やせる走り方』『世界一伸びるストレッチ』(中野ジェームズ修一著)など。

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