生理と重なった五輪 伊藤華英が語る、女子アスリートと思春期の付き合い方
4年に1度の大舞台で“重なった”北京五輪「五輪は、さすがに…」
実際に泳いでいる時は「腹筋に力が入らず、おなかがポヨンとしている感じ。水の感覚も違ってくる」という。いつもと同じように食べているのに急に3キロ太り、タイムは0.3~4秒、遅くなった。しかし、気持ちが落ち込んだり、本来の泳ぎとズレたりしても、具体的な解決策はなく、どうすることもできなかったという。
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最も恐れるのが、大会と生理が重なってしまうこと。競技生活で経験はあったが、23歳で挑んだ北京五輪では4年に一度の夢舞台で起こってしまった。「五輪は、さすがに……」が本音だった。悩んだ挙句、チーム関係者と相談し、決断したのは、ピルを飲むこと。「それが失敗でした。体に合わなくてニキビもできて、3~4キロ太ってしまったんです」と明かす。
万全とはいえないコンディションでも、ベストを尽くした。背泳ぎで100メートル8位。200メートルは準決勝敗退に終わったが、奮闘した。ただ、「失敗」と話したのは「飲んだこと」自体ではなく、「五輪で初めて飲んだこと」だった。「今になってみると、もっと前から飲んでおけば良かったと思います」と振り返る。
「引退してから大学院で生活が不規則になり、婦人科で相談して飲んで体調を整えるようになったら、落ち着いた。北京の時はすごくホルモンの高いものを使ってしまっていたんです。当時、自分が知識を持っていなかったのがすべて。自分なりに対処がわかってきたのは社会人になってから。だから、もっと前から飲んでいたら、という思いはあります」
同年代の周囲の選手たちも、大会に重なっても互いに「やるしかないよね」と言い合い、気持ちで克服するしかない。「ピルはドーピングにならないの?」とすら思っていた。日本代表選手の伊藤さんも同様。五輪に出場するトップスイマーでも、あまりに知識がない。問題だが、それが現実だった。
「太ったり、いらいらしたりは抑えられるので、薬でできることは知っておいた方が良かった。飲んではいけないと思っていたので、飲みながら競技をしていたら、絶対に変わっていたなという思いはあります」