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「誰かと一緒になりたくない、絶対に」 女子クライマー・野中生萌という名の個性

「清廉潔白なアスリート像」が過剰に求められる中にあって、野中は自然体を貫いている【写真:荒川祐史】
「清廉潔白なアスリート像」が過剰に求められる中にあって、野中は自然体を貫いている【写真:荒川祐史】

「憧れの女性」はいなかった、「誰かと一緒になりたくない」という思い

 しかし、こうして競技の多様化が進む日本スポーツ界において、昨今の女子アスリートの立場は、やや難しい立場にある。競技から離れた時間に髪色を変えたり、ネイルを楽しんだり、競技にメイクを決めて出たりすることを揶揄する声が一部で上がる。

 ともすれば、「清廉潔白なアスリート像」が過剰に求められる今。「競技者として戦うこと」と「女性らしくあること」のバランスについて、野中は「特に考えたことはない」と自然体を貫き、思いを明かす。

「ビジュアルと競技を分けて考えることはない。周りがどう思うかはその人の考え方によるし、捉え方は人それぞれ。なんであってもいいと思うけど、私は私なりの“これがいい”というものがしたいだけなので」

 自らが思う“アスリート像”が確立している。だから、競技に対するこだわりも強い。例えば、ウェアについて聞くと「ダサイ服は着たくない、かな」と“らしい”言葉で、屈託なく笑う。

「クライミングをして、お客さんを楽しませるのはパフォーマンスだけでなく、外見も重要と思うので」

 ウェアもファンを魅せるために欠かせないものの一つ。前提にあるのは機能性、なかでも重視するのは「素材の軽さ」という。「クライミング自体が重力に逆らうスポーツなので。単純に重いものよりも軽いものを身に着ける方がいい」とする。

 最近では、スポンサー契約を結んでいるアディダス社のトレーニングウェア「HEAT. RDY」も、トレーニング中のこだわりの一つだ。「動いていて、違和感がない。競技中にキツさとかが気になるのが一番イヤなので。それがまさにない」と明かす。「裾が広がっているのが好きじゃないけど、これは体に良い具合にフィットするので全く気にならない」という細部に対する繊細な感覚が、世界の第一線で戦う自らを支えている。

 こうして話を聞いていて感じさせるのは、クライマーとしての強烈なまでの自負。いったい、本人にとってはどんなクライマーが理想なのか。「強いクライマーになりたいというのは間違いなく、ブレずにある」と言い、もう一つ加えた。

「ビジュアル的なところを取ってみても、一人の野中生萌というキャラクターとして『ファッション、いいよね』などと言ってくれる人がいるなら、それはうれしい。

 誰かと一緒じゃなく、野中生萌みたいになりたい。誰かと一緒じゃなく、野中生萌のクライミングを目指したいという子が出てきたら、うれしいって思うかな」

 だから、幼い頃に憧れた女性は特にいなかったという。歌手、モデル、スポーツ選手……。素敵、可愛いと思っても「あんな風になりたい」という、普通の女の子にありがちな感情は芽生えることはなかった。当時、思っていたことは一つ。

「誰かと一緒になりたくない、絶対に」

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