トレーニング後に選手が漏らす言葉「脳が疲れた…」

　再び中川が解説する。

「速く走るなどのアクションスピードを上げるのは難しい。でも、認知や決断のスピードを上げることは可能だと思うんです。そのために僕は、敢えてすべてのトレーニングをフットボールと切り離さずに、原則論を伝えることで予測力を高めてきました。例えば、GKからビルドアップを始めるのに、ゴールに速く到達するにはどこを目指せばいいのか。状況や自分がいるゾーンを考えて、どんなプレーを優先的に選択するのか。あるいは、ボール、ゴールとの位置から推測して相手はどこにポジションを取ろうとするのか……」

　これまで多くのブラインドサッカーの活動は、盲学校の先生たちの多大な努力、尽力で支えられてきた。

　一方、新しい日本代表で、中川はサッカーという競技に即した指導で選手の成長を促している。トレーニングを終えると、選手たちからは「脳が疲れた……」という言葉が漏れている。

（文中敬称略）

（最終回へ続く）