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【今、伝えたいこと】 「国難とスポーツの力」 震災を乗り越え、W杯で世界一になった佐々木則夫の願い

新型コロナウイルス感染拡大により、スポーツ界はいまだかつてない困難に直面している。試合、大会などのイベントが軒並み延期、中止に。ファンは“ライブスポーツ”を楽しむことができず、アスリートは自らを最も表現できる場所を失った。

11年W杯を制し、澤穂希(左)と優勝トロフィーを掲げる佐々木則夫氏【写真:Getty Images】
11年W杯を制し、澤穂希(左)と優勝トロフィーを掲げる佐々木則夫氏【写真:Getty Images】

連載「Voice――今、伝えたいこと」第1回、なでしこジャパンを率いた名将のメッセージ

 新型コロナウイルス感染拡大により、スポーツ界はいまだかつてない困難に直面している。試合、大会などのイベントが軒並み延期、中止に。ファンは“ライブスポーツ”を楽しむことができず、アスリートは自らを最も表現できる場所を失った。

 日本全体が苦境に立たされる今、スポーツ界に生きる者は何を思い、現実とどう向き合っているのか。「THE ANSWER」は新連載「Voice――今、伝えたいこと」を始動。各競技の現役選手、OB、指導者らが競技を代表し、それぞれの立場から今、世の中に伝えたい“声”を届ける。

 第1回はサッカーの元女子日本代表監督、佐々木則夫氏が登場する。東日本大震災で日本が苦難を味わった2011年、「なでしこジャパン」を率いて女子ワールドカップ(W杯)を制した名将が当時の経験から「国難とスポーツの力」について持論を説いた。

 ◇ ◇ ◇

 目に見えない敵により、私たちの目に見える世界は、一変した。

 スポーツ界はスタジアムから躍動と熱狂を失い、その波は世界に拡大した。サッカー界も同様だ。日本では、Jリーグは3月から中断され、なでしこリーグは開幕が延期した。

 国民が「新型コロナウイルス」という生命を脅かす未知なる敵と闘う日々。スポーツの世界に生きる者として「今、伝えたいこと」を率直に問うと、佐々木は静かに口を開いた。

「スポーツは試合に臨むにあたり、常日頃、壁にぶち当たる。社会も一緒だと思う。人生を歩んでいく上で、予想もできないことが起こり得る。その一つが、今回の出来事。そんな時に大切なことは、あまり右往左往せず、現実を受け止めて、行動していくこと。その経験を多くしているのが、スポーツ界ではないか。

 そうであるなら、スポーツ界は心して前に進もうとメッセージを積極的に発信すべきと思っている。スポーツに関わる人たちの多くは、これまで順風満帆に競技ができていたのではないか。今、そのスポーツができる感謝と喜びをしっかりと噛み締め、状況が良くなった時に力とするだけの思いを持っていてほしい」

 次第に口ぶりが熱気を帯びた佐々木には、スポーツが持つ力について、経験に導かれた確信がある。

「今回と経緯が違うことは承知していますが」と前置きした上で、「2011年も先が見えない中で歯を食いしばり、結果を出すことができたんです。何度も、奇跡みたいな試合をして」と9年前の記憶を呼び起こした。

 あの春も、日本は闇の中にいた。

 2011年3月11日、東日本大震災。1万8000人以上の犠牲者を出し、東北を中心に各地で甚大な被害をもたらした災害により、日常は一変した。午後2時46分。佐々木自身、埼玉・大宮の自宅で大きな揺れを感じた。

「ちょうど、なでしこジャパンの選手たちとポルトガルで大会に参加して成田に戻ってきた日でした。空港から戻って、家についてほっとして、椅子に座ったところで……」

 しかし、その4か月後の7月17日。遠くドイツの地で、なでしこジャパンを率いた佐々木はW杯で世界一の歓喜の中にいた。「奇跡みたいな試合」に辿り着く過程で、指揮官としていったい、何を見たのか。

 当時を遡ってみると、今のスポーツ界に課された“宿題”が見えてくる。

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