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「とにかくアメフトがしたい」 残された日大選手の苦悩、悪質タックルからの2年半

グラウンドに向かって深く頭を下げる日大【写真:荒川祐史】
グラウンドに向かって深く頭を下げる日大【写真:荒川祐史】

「理屈よりも気持ちの方が強かった」、魂で決めた甲子園ボウル出場

 一枚岩になったチームは、甲子園ボウルを争う大一番でも崩れなかった。林が負傷交代。第2クォーター(Q)に一時逆転を許す苦しい展開となった。それでも、第2Q残り37秒にRB川上理宇(4年)が複数の相手タックルを受けながらも、倒れることなく突進。逆転の決勝タッチダウン(TD)を決めた。計3TDのヒーローは「理屈よりも気持ちの方が強かった」と振り返り、白い息とともに苦しかった思いを吐き出した。

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「4年間ずっと甲子園ボウルに行くつもりだった。全員を連れて行く気持ち。タックル事件の時は絶望で何もできなかった時もあったけど、ある意味絶望と仲良くなった。事件を経験して以降の数年間がすごく僕らを強くしてくれた。あの事件に比べたら……と思う時がある。帰って来られる確証はなかったけど、取り組みが全て繋がると思いながらやっていた」

 窮地を自分たちの力で打破した選手たち。他大学出身ながら再建を託された橋詰監督にとっても挑戦だった。「このチームはいろんな逆境を乗り越えて力をつけてきた。今日はキャプテンもエースQBも怪我でいない中、逆境に強いチームを見せた。精神的な強さが今年のチームの強みです」。取材を終えると、教え子たちとの記念撮影の輪へ走った。

 甲子園ボウルの相手は関学大だ。5年連続54度目の出場で2連覇中の最強王者。両校が激突するのは「絶望」のきっかけとなった定期戦以来。甲子園ボウルでは、3年ぶり30度目となる“永遠のライバル”だ。3年前の対決は日大が関東勢の連敗を10で止め、27年ぶり21度目の優勝。日大のいない過去2年、関学大は日本一の座に君臨してきた。

 夢に描いた決戦へ。林がフェニックス全員分の思いを代弁した。

「あの事件を知る僕たちが最後に関学さんと当たるのは運命。先輩の分も背負って僕らが一番にならないといけない。3年間苦しかったけど、『全員フットボール』を関学さんに見せつけたい。みんなでとにかくフットボールがしたいです」

 もう遺恨なんかない。純粋にアメフトに生きる選手たちが、甲子園を舞台にぶつかり合う。

(THE ANSWER編集部・浜田 洋平 / Yohei Hamada)


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