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世界で進む「食と栄養のサステナブル」問題 日本のアスリートが取るべき行動は

身近からできること「買いすぎない」「作りすぎない」「食べきる」

 まずは可能な範囲で、地元で生産された安全な食材を選ぶことが挙げられます。地元で採れた安全で栄養価の高い食品は、体を酷使する選手の健康維持に役立ちます。また、地元との繋がりを肌で感じることは選手のモチベーションアップや地域社会における存在価値を高めるのに役立つはずです。さらには、チーム、あるいは競技団体として今後、地域と共に様々な取り組みを行う機会が増えます。

 そして、アスリートたちが自らサステナブルに関するイベントなどに積極的に参加し、自身の取り組み、あるいは企業や地域と共にできることについて学ぶ(考える)機会を増やす、あるいは増えていくようにすることも一つ。

 一例ですが2016年、コロラドスプリングスのU.S.オリンピック&パラリンピックトレーニング・センターを視察した際、サステナビリティ、ウェルネス教育農場を運営しているコロラド大学コロラドスプリングス校を見学しました。ここではアスリート自身が、農家に食材を提供してもらうために出向いたり、農場と一緒に地産地消やベジタリアンフードのイベントを開催したりして、地域貢献やジュニアアスリートへの食育に貢献しています。このような形が、日本でも増えていくといいなと感じています。

 もちろん、こういったサステナブルな食と栄養の取り組みは、トップアスリートやクラブ、一部の競技団体だけではなく、社会人や学生選手、学校の部活動や地域のスポーツクラブに所属する選手やスタッフ、そしてその家族の一人ひとりが今後取り組んでいく課題です。「そういわれてもピンとこない」「環境に配慮した食事といわれても雲を掴むような話」と感じられる方は多いと思いますが、できることは身近にたくさんあります。

 その一つが、食品ロスを減らすこと。日本では、本来食べられるのに捨てられる食品ロスの量は年間643万トン(平成28年度推計値)。これは日本人1人当たり年間約51キロもの食品ロスを出している計算になります。今や家庭での食べ残しや食品の廃棄を減らすことの重要性はメディアや企業の活動を通じて知られていますが、例えば遠征や合宿時の食べ残しを減らすよう、チームとして実践。プロや社会人のトップチームは宿泊先でブッフェスタイルの食事を提供することが多いのですが、私のような現場でメニューを考える栄養士も、食事の喫食量を宿舎と確認しながら提供するなど、無駄を少なくする努力が必要だと感じています。

 まずは、日々、「買いすぎない」「作りすぎない」、そして「食べきる」ことから始める。1日1食で考えると、とても小さな行動かもしれません。ですが、一人ひとりが取り組むことで、食品ロスの大きな削減につながり、結果、サステナブルな環境保全にもつながります。体が資本のスポーツ人だからこそ、食の問題としっかり向き合い、一食一食を大切にしたいですね。

(長島 恭子 / Kyoko Nagashima)

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橋本 玲子

株式会社 Food Connection 代表取締役

管理栄養士/公認スポーツ栄養士

ラグビーワールドカップ(W杯)2019で栄養コンサルティング業務を担当。2003年ラグビーW杯日本代表、サッカーJ1横浜F・マリノス(1999年~2017年)、ラグビーリーグワン・埼玉パナソニックワイルドナイツ(2005年~現在)ほか、車いす陸上選手らトップアスリートのコンディション管理を「食と栄養面」からサポート。また、ジュニア世代と保護者に向けての食育活動も行う。アメリカ栄養士会スポーツ循環器栄養グループ(SCAN)並びに、スポーツ栄養の国際的組織PINESのメンバー。アメリカ栄養士会インターナショナルメンバー日本代表(IAAND)として、海外の栄養士との交流も多い。近著に『スポ食~世界で戦うアスリートを目ざす子どもたちに~』(ベースボールマガジン社)

URL:http://food-connection.jp/

長島 恭子

編集・ライター。サッカー専門誌を経てフリーランスに。インタビュー記事、健康・ダイエット・トレーニング記事を軸に雑誌、書籍、会員誌で編集・執筆を行う。担当書籍に『世界一やせる走り方』『世界一伸びるストレッチ』(中野ジェームズ修一著)など。

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