「自分はどうやったら負ける?」 弱さと向き合った大野将平、五輪連覇の土台にある10代での苦悩
多感な思春期を、トップアスリートたちはどんな思いを抱きながら駆け抜けたのか。キャリアを積み重ねた今だからこそ見える景色とは――。THE ANSWERが各競技を代表するアスリートたちの“原点”に迫るインタビュー連載「10代のジブンへ」。スポーツに勉強に一生懸命だった日々を振り返りながら、その後のキャリアにつながった経験、人生を変えた出会いや言葉などを思い起こし、今を生きる中高生アスリートにメッセージを送る。

連載「10代のジブンへ」第3回、大野将平(柔道)後編
多感な思春期を、トップアスリートたちはどんな思いを抱きながら駆け抜けたのか。キャリアを積み重ねた今だからこそ見える景色とは――。THE ANSWERが各競技を代表するアスリートたちの“原点”に迫るインタビュー連載「10代のジブンへ」。スポーツに勉強に一生懸命だった日々を振り返りながら、その後のキャリアにつながった経験、人生を変えた出会いや言葉などを思い起こし、今を生きる中高生アスリートにメッセージを送る。
【注目】女性のバストは「激しく揺れている」 競技パフォーマンスに影響する可能性も…研究員が語る運動時の衝撃の大きさ(W-ANS ACADEMYへ)
五輪連覇を達成するなど「最強の柔道家」と称された大野将平さんは、強さを手にするためには、自らの“弱さ”を知る大切さがあると説く。自問自答を繰り返し、負ける可能性が1%でもあれば、それを払拭するために自らを追い込んだ。指導者になった今、海外の環境にも触れたうえで、あらためて日本柔道の未来へ想いを馳せる。10代アスリートに向けて、自らの経験をもとにメッセージを送った。(取材・文=二宮 寿朗)
◇ ◇ ◇
《負けてばかりの中学時代を経て、急速に力をつけていった高校時代。大野将平さんは柔道私塾「講道学舎」で培ったものを土台に、成熟期に入っていく。2012年、天理大学3年時のグランドスラム男子73キロ級初優勝を皮切りに国際舞台でも強さを発揮するようになり、2016年のリオデジャネイロ、2021年の東京と五輪2連覇を果たすなど、勝ってばかりの柔道家にたどり着く。いかにして弱い自分から強い自分に変貌を遂げていくことができたのか――》
誰しも最初は弱いものです。柔道の世界で初めから強かった人というなら、それこそ山下泰裕先生くらいではないでしょうか。体の成長期にある少年時代には、自分より大きい人とも当たりますし、競技をやっていれば絶対に負ける。じゃあそれが弱いかと言ったら、私はそうじゃないと思っています。
世界に行くレベルの選手は確かに「強い」ですが、それは自分の「弱い」部分を知っているから。私は金丸雄介コーチに言われたのですが「防衛的悲観主義」の人間だそうです。つまり自分は弱いんだから、誰よりも稽古をこなしていかなければならない、と考えるタイプです。東京五輪に向かう時も、人から強いねと言われるたびに、自問自答しようと決めていました。“俺、本当に強えのか”って。メチャメチャ稽古やっているねと言われるたびに、“いやいや、こんくらいでいいのか”って。周りの声に同調してしまったら、その時から成長はないなって思うようにしていました。
自分はどうやったら負けるんだ、ということを毎日考えていました。負ける可能性が1%でもあれば許せなかった。でも、それはネガティブ思考ではなくて、裏を返せば最悪を想定して負けないためのケアとカバーをしているだけなんです。
私は歴史が好きで、大学院時代には宮本武蔵の『五輪書』を読みました。井上雄彦さんの『バガボンド』も愛読書です。ここからも弱さのうえに強さがあるということを感じましたし、持田治也先生から「お前は自分の弱さを知っているから強い」と言われたこともあります。
柔道で勝つことと言えば投げること、負けることは投げられること。子供の頃は負けが先行していて、だんだん勝てるようになって、最終的には人と比べても勝ったほうが多くはなりました。でも最近は旭化成柔道部のコーチ兼受け手(技をかけられる練習相手)でも、普及活動でも、ボコボコ投げられます(笑)。もちろん(指導者になった)今と投げる、投げられるの意味合いはまったく違うとしても、人生というものは帳尻が合うんだなと妙に納得させられています。
![[THE ANSWER] スポーツ文化・育成&総合ニュースサイト](https://the-ans.jp/wp-content/themes/the-answer-pc-v2/common/img/logo_c1.png)








