部活のスポンサーは地元のピザ屋や町中華 「お金は出すが口出さず」ジュニアスポーツの健全な商業化
「THE ANSWER」がお届けする、在米スポーツジャーナリスト・谷口輝世子氏の連載「Sports From USA」。米国ならではのスポーツ文化を紹介し、日本のスポーツの未来を考える上で新たな視点を探る。今回は「地域のお店は、なぜ、運動部や子どものスポーツのスポンサーになっているのか」。

「Sports From USA」―今回は「地域のお店は、なぜ、運動部や子どものスポーツのスポンサーになっているのか」
「THE ANSWER」がお届けする、在米スポーツジャーナリスト・谷口輝世子氏の連載「Sports From USA」。米国ならではのスポーツ文化を紹介し、日本のスポーツの未来を考える上で新たな視点を探る。今回は「地域のお店は、なぜ、運動部や子どものスポーツのスポンサーになっているのか」。
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アメリカで飲食店に入ると、子どものスポーツの集合写真を飾っているところがある。私がこれまでに見かけたのは、自動車ディーラー、スーパーマーケット、スポーツバーなどで、スポーツバーでは、ご当地のプロスポーツ選手のユニフォームを飾っていることが多いが、地元の高校のユニフォームを飾っているところもある。
こういったものを掲示しているお店は、全てとは言い切れないが、子どものスポーツチームや高校運動部のスポンサーであることが多い。自分たちが彼らの活動を支援していることを示しているのだ。集合写真に「オフィシャルスポンサー」という文言が入っているものや、子どもたちからの感謝状が飾られていることもある。
スポーツのスポンサーといえば、ユニフォームにスポンサー名を入れて宣伝効果を図ることが思い浮かぶ。しかし、アメリカの高校の運動部でユニフォームにスポンサー名を入れているのは、4%以下で、グラウンドや体育館にバナーを掲示したり、このように店内で支援を示したりしていることも多い。学校外の子どものスポーツチームに関しては、正確なデータはないが、スポンサー名をユニフォームに入れている割合は学校運動部よりは高いのではないかと感じる。わたしの息子たちが小中学生時代に入っていた競技アイスホッケーチームでは、企業ロゴの入ったユニフォームを着用しており、小学校低学年時のレクリエーションの野球チームのユニフォームには、背番号の上に医療クリニックの名前が入っていた。これは保護者のひとりが経営していたクリニックであった。
先日、ミシガン州デトロイト郊外で、ベーグルとコーヒーを売るお店に入ったところ、2000年ごろからの地域の子どものバスケットボールチームの集合写真がずらりと並んでいた。ああ、このお店は熱心にスポンサーをしているのだなというのがお店の第一印象だ。オーナーに聞いてみると、写真は飾っていないが、中学や高校の運動部も支援しているとのこと。
スポンサーをしている理由をたずねるとこのような答えが返ってきた。
「私はここで22年間、ビジネスをしています。この地域のまわりにはたくさんの学校があり、中学校と高校もあります。私たちのお店に毎日のように来てくれる常連のお客さんは、(学校に子どもを通わせている)保護者が多いのです。子どもたちもこの地域で育っていきます。この地域にある中学校や高校はさまざまな活動をしており、(その活動を運営する保護者は)財源の調達をしています。
うちのお店だけでなく、この地域のスモールビジネスは、そこの中華料理店やピザ屋とかも、助けを求められます。こういう支援をしてほしいとか、ベーグルを差し入れしてほしいとか。こういったお願いをしに来られるのは、私たちの常連のお客です。それで、いろいろなイベントにベーグルを寄付しています。子どもたちはとてもベーグルが好きですから」