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「流した汗は嘘をつかない」は”嘘” 来日6年の伊指導者が語る、日本の育成論の誤り

ACミランアカデミー千葉佐倉のテクニカル・ディレクターを務めるルカ・モネーゼは、明快に言い切った。「やればやるほど上手くなる。こうしたトレーニングに対する認識は間違っています。UEFA(欧州サッカー連盟)には、科学的な根拠に即して、心理学、栄養学なども含めて様々な見地から、成長過程の選手たちに適したトレーニングの研究を進めている人間がたくさんいます。限界を超えたトレーニングは、パフォーマンスを落とすだけではなく、テクニックもレベルも下げてしまう危険を孕んでいます。トレーニングで重要なのは“何をやったか”であり、“どれだけやったか”ではありません」

モネーゼ氏は日本人選手は小学生になると予測しやすいプレーが目に付くと指摘する【写真:加部究】
モネーゼ氏は日本人選手は小学生になると予測しやすいプレーが目に付くと指摘する【写真:加部究】

【“知日家”イタリア人指導者の育成論|最終回】育成とは多様な可能性を探り出す作業「誰にでも当てはまる正解はない」

 ACミランアカデミー千葉佐倉のテクニカル・ディレクターを務めるルカ・モネーゼは、明快に言い切った。

「やればやるほど上手くなる。こうしたトレーニングに対する認識は間違っています。UEFA(欧州サッカー連盟)には、科学的な根拠に即して、心理学、栄養学なども含めて様々な見地から、成長過程の選手たちに適したトレーニングの研究を進めている人間がたくさんいます。限界を超えたトレーニングは、パフォーマンスを落とすだけではなく、テクニックもレベルも下げてしまう危険を孕んでいます。トレーニングで重要なのは“何をやったか”であり、“どれだけやったか”ではありません」

 日本では「流した汗は嘘をつかない」などの格言が、まるで名選手への近道であるかのように信じられている。だがモネーゼは「そもそも誰にも当てはまる育成の正解などありません」と断じる。

「日本の人たちは、成功した選手たちがどんな足跡を辿ってきたのかを探るのが好きですよね。でもイタリアでは、そういう話に興味を持たれません。誰かのようになりたいのではなく、みんな自分が一番になりたいと考えるからです」

 確かに日本では、成功のサンプルから逆算して、だから何歳までにこれができなければならないと急ぐ指導者が少なくない。

「しかし人間は、何歳になっても成長する可能性を持っているんです。それにサッカーには、いろんなポジションがあります。そしてそれぞれが適性も異なります。日本ではボール扱いを重視する傾向がありますが、例えばイタリアにジョルジョ・キエッリーニ(ユベントス)というディフェンダーがいます。おそらく彼はリフティングをやらせれば、とてもおぼつかないと思いますよ。でも今では世界のトップレベルと認識されています」

 つまり育成とは、多様な可能性を探りながら、個々に即した成長を探り出す作業になる。

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加部 究

1958年生まれ。大学卒業後、スポーツ新聞社に勤めるが86年メキシコW杯を観戦するために3年で退社。その後フリーランスのスポーツライターに転身し、W杯は7回現地取材した。育成年代にも造詣が深く、多くの指導者と親交が深い。指導者、選手ら約150人にロングインタビューを実施。長男は元Jリーガーの加部未蘭。最近、選手主体のボトムアップ方式で部活に取り組む堀越高校サッカー部のノンフィクション『毎日の部活が高校生活一番の宝物』(竹書房)を上梓。『日本サッカー戦記~青銅の時代から新世紀へ』『サッカー通訳戦記』『それでも「美談」になる高校サッカーの非常識』(いずれもカンゼン)、『大和魂のモダンサッカー』『サッカー移民』(ともに双葉社)、『祝祭』(小学館文庫)など著書多数。

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