2027年W杯へ芽吹くエディー・チルドレンの才能 課題露呈も…短期間で「目まぐるしい成長」評価された逸材
最も差をつけられたのは「遂行力」
エディーは合宿で「ゴールドエフォート(金色の努力)」というキーワードを使っている。1回のプレーの後、次の仕事に行どれだけ早く動けるかを象徴する言葉だが、それをゲームで最も体現しているのが根塚だった。終了直前のゴール前の攻撃からインゴールに飛び込み、イングランド戦からの連続トライをマークしたが、このスコアもゴールドエフォートの賜物だろう。矢崎のような典型的な「走り屋」のアウトサイドBKも魅力だが、攻守に俊敏さとプレーを反復する献身さを持つ根塚タイプのアタッカーにも注目したい。
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次世代ジャパンのパフォーマンスをピックアップしてきたが、この完敗のスコアは、それ以上に多くの“宿題”をチームに科している。勝者に最も差をつけられたのが、先にも触れた「遂行力」だ。相手にボールを奪われたターンオーバーは日本の21回に対してマオリは14回と差があったが、アタックでボールを持った回数は日本の93回に対してマオリは104回とスコアほどの差は見られない。ボール保持率も47%対53%と互角に近く、地域支配率では65%対34%と日本が上回っている。タックル成功率でも89%対86%とやや日本が勝っている。
そんなスタッツの中で、手元のメモ書きではあるが、両チームが敵陣22mラインを突破した回数が遂行力の判断材料になるだろう。日本の11回に対してマオリは10回だが、トライ数は2対6。この数字が物語るのは、日本がマオリと互角かそれ以上にチャンスを作りながら、スコアに繋げていない現実だ。
加えて、マオリが2度のシンビン(10分間の一時退場)で14人だったときも日本はスコア出来ず、逆に相手に2トライを許している。マオリは、後半3分の4個目のトライまで、22m内に4回侵入して全てをスコアに結び付けているのだが、対する日本は敵陣ゴール前でPKからラインアウトの勝負に固執したがノットストレート、モールからボールを相手にもぎり獲られるなど、有効な攻撃に繋げることが出来なかった。
このラインアウトにこだわった選択について、主将の原田はこう振り返る。
「ゲームプランとして、先ずモールとスクラムを押すというところを準備してきました。そこは僕らがプライドを持ってやりたかったので選択に後悔はない。あとはエクスキューション(遂行力)のところだけかなと思います」
イングランド戦での好感触もあり、セットプレーでマオリに重圧、揺さぶりを掛けたいという思惑があったのだろう。置かれた状況の中でどう判断するのかはゲームリーダーの特権だが、用意したプランと、試合が始まってからの戦況や、個々のプレーの優劣、出来不出来などで、柔軟な判断をすることは重要だ。代表主将のFLリーチマイケルやHO坂手淳史のようなリーダーシップを持つ選手不在の中で、この若いチームが、自分たちが置かれた状況の中でどういうプレーを選択していくかは、まだまだ学びの段階だと判断するべきだろう。
さらに個々のプレーに踏み込むと、選手が攻め急いでのミスでボールを失っていることも遂行力の低さに繋がっている。先ほども指摘した開始3分、後半13分の矢崎の好ランからのノックオン、反則も然りだが、21分にも矢崎とCTBトゥアの連携ミスからのハンドリングエラー、同21分にはマオリ陣に攻め込みながらのファンブルから70m近くを3人に繋がれトライを奪われている。どのシーンも、気持ち数十cm、数m攻め過ぎたり、無理な状態からのパスを乱すなどしてボールをリサイクル出来なかったものだ。
この攻め急ぎについては、根塚の言葉が現状をよく物語っている。
「先週、今日とプレーして、チームは相手の22mライン内に入ってから取り急いでいるように思います。アタックラインが練習よりも浅くなってしまっている。パスする側がもう1つ溜めて、相手を呼び込んでボールを渡すことが出来ていれば、外側のスペースを使えるはずです。そこをもっと練習で自分たちが話し合っていけば、すこし変わっていくはずです。そこの歯車がかみ合って、トライが取れ始めたら、本当に流れが変わってくる。そこまで練習で突き詰めていかないといけないと思います」
イングランド戦完敗から注目した、チャンスをどこまでスコアに繋げられるかという課題は、残念ながら今週末の試合へ持ち越された。6日に愛知・豊田スタジアムで行われるマオリ・オールブラックスとの最終戦でも、予定通り若い布陣で挑むのであれば再び厳しい戦いになるだろう。選手個々のポテンシャルは芽吹き始めている。「投資」を続ける中で、いかに「遂行力」を高めていけるのか。第1戦完敗からの学びに注目したい。
(吉田 宏 / Hiroshi Yoshida)