リーグワン復活Vの陰に東京伝統の呑み会文化 盃を交わし、クラブを愛した王国NZ司令塔の真髄
クルセイダーズとBL東京に「ラグビーと関係ないところで共通点がたくさん」
「クルセイダーズには長い成功の歴史があるのに対して、BL東京は直近ではあまり勝てていなかった。なので、このチームのポテンシャルの鍵をどう開けるのか、最高のラグビーをするにはどうすればいいのかを考えてきた」
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その鍵の一つが、チームが自分たちのラグビーを信じて、ゲームプランを遂行し続けることだった。3月には埼玉の分厚い防御や個々の選手の能力の前に80分間演じ切れなかった自分たちのゲームスタイルを、決勝では4点差で競り勝てるまでに表現出来たことが、14シーズンぶりの覇権奪回に繋がった。
そこには、自分たちより順位も、多くのデータでも上回る相手を倒すための秘策はない。どこまで反則やミスを犯さずにゲームプランに則ってボールを前へ進め、相手のアタックを守り切るかが問われた。日本のラグビーも、ようやく世界クラスの「ミス(反則)をしたチームが負ける」というセオリーで勝敗が決する時代を迎えるようになってきた。
そんな戦いぶりをみせたチームと祖国の常勝チームには、共通するものもあるとモウンガは指摘する。
「共通するのは、80分間ハードワークすることは当然必要です。あとはチームに関わる人たちに対しての強い思いですね。そしてやはり、お互いに楽しむのが好きな人たち。ラグビーと関係ないところで共通点はたくさん感じています。ラグビー以外の、そんな部分が大事だと感じています」
仲間を信じ、チームが上手くいかない状況の中でも、積み上げてきたことを裏切らない信念の強さ。その信念を15人、いや登録メンバー23人全員が80分間持ち続けること。選手の能力や技術的には大きな差はない上位チームの凌ぎ合いの中では、そんな精神的な領域も含めた強さが重要になる。目先の勝利だけではなく、自分たちの信じて取り組んできたゲームプランを最後までやり遂げる強固な意志と、遂行力。これが、最強の相手とのフルタイムの渡り合い、僅差ではあってもスコアで上回れた勝ちきれる強さを支えた。
チームの成長、強さは、ゲームのスタッツからも浮かび上がる。
リーグ戦1位(埼玉WK)と2位(BL東京)の、まさに四つに組み合う真っ向勝負は、前半を2本のPGのみで終えた埼玉に対して、BLは1トライ(ゴール)、1PGの10点をマークして折り返した。この前半の40分間に、BL東京がシーズンを戦いながら積み上げた進化が読み取れた。
3月の対戦では24-36と敗れたが、この試合を怪我のために欠場したリーチマイケル主将はスコア以上の力の差を感じていた。
「課題は規律でした。埼玉WKがディフェンスですごく反則が少なくて、ウチは多かった。そこを見直していかないといけない」
プレーオフ直前のコラムでも紹介したが、この試合での反則数はBL東京の15に対して埼玉WKは14とほぼ同じだった。だが、前半の反則の詳細を見てみると、BL東京が自陣で6回の反則を犯した一方で、埼玉WKはわずか2回しか笛を吹かれていない。相手の反則を起点とした得点を見ても、BL東京が1PGの3点のみだったのに対して、勝者は1トライ、4PGと前半全てのスコアをマークしている。勝負の流れを掴むのに重要な前半の主導権争いの時間帯での、この格差が勝敗に大きく影響していた。
だが、今回の決勝の数値を見ると、その様相は3月とは大きく変わっている。