リーグワン復活Vの陰に東京伝統の呑み会文化 盃を交わし、クラブを愛した王国NZ司令塔の真髄
BL東京の“呑み会”の伝統「決勝戦の夜は皆で祝って、ビールを呑んで、笑って踊って…」
「決勝戦の夜は皆で祝って、ビールを呑んで、笑って踊って過ごしました。すごく“正しいやり方”でね。ああいうのは、自分のキャラクターにもぴったりです」
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昨今のトップアスリートは過度の飲酒を控える傾向にあるのが当たり前だが、BL東京は仲間との酒席で積極的にコミュニケーションを図ってきたチームとしてラグビー界では知られている。現在GMを務める薫田真広も酒豪として知られ、OBの大野均は日本代表時代にエディー・ジョーンズHCから「特例」で飲酒を認められていたほどだ。現在主将を務めるリーチマイケルも、酒をチームのコミュニケーションを高める文化と認めている。そんな伝統が背景にある中で、新参者のモウンガは“東芝流”の祝勝会をこう歓迎した。
世界一、二を争う指令塔が初めて日本のチームに飛び込んで、決して“派手目”ではない府中の無骨な男たちと共に戦い、酒を酌み交わし、互いの距離を近づける。ラグビーならではの文化でもあるが、その背景には世界屈指の強豪クラブ、クルセイダーズで培われた勝つための文化がある。モウンガ自身がMVP受賞について語った言葉に、その真髄が読み取れる。
「一番嬉しいのはチームがリーグを勝てたことです。僕が日本に来たのはベストプレーヤーになるためでも、自分個人の成果を達成するためでもない。東芝にいい影響を与えて、トーナメントで勝つためです。なので、いまは肩の荷が降りたような感じです」
最高の選手の前に最高のチームマンたれ――クルセイダーズで学んだそんな価値観が、この10番に叩き込まれている。「エースで4番」だけでは勝てないのがラグビーだが、それは単なる精神論でも情緒論でもない。球技としては多い15人の選手たち1人ひとりが、いかに機能して組織としての役割を果たしていけるか。このテーマは、世界レベルでも日々高まり続けている。そんな中で、世界屈指の実力、実績を残し続けてきたクルセイダーズというクラブは、オフ・ザ・ピッチの大切さを組織として熟知している。
「ラグビーについていえば、当然プレーのやり方というのはあります。ただ、文化面、人との繋がり、あとは勝ちたいという強い思いという、ラグビーフィールドとは全く関係ないことも含めてですが、そんなことが大事なんです。毎日昼食を一緒にしたり、コーヒーを飲んだりね。そういうラグビー以外の細かいことが、フィールドの上に立った時に大事になるんです。自分のチームメートを理解する、彼の家族や妻のこと、どこの出身かといった、チームの仲間とのより深い互いの関係性を築くことがすごくプレーをやり易くするんです」
NZも含めた英語圏文化は、日本以上に合理的な考え方を重視するが、ラグビーに関しては選手個々のスキルやデータなどの数値、プレースタイルの理解や評価だけでは強いチームは作れないということを、この世界最高峰の10番は知っている。
同じクライストチャーチ出身のリーチも「シャノン(フリゼル)も含めて、シーズン通してよく呑み会を開いてきた。そこで自分たちの経験や、東芝、オールブラックス、クルセイダーズのこともたくさん話し合ってきた。2人ともBL東京の文化がすごく好きで、いいチームだと思ってくれている」と絆を深めてきた。
仲間の人間性まで深く知ることで、チームがより厚みと深みのある、1つの組織体として80分間機能することが、勝つためには重要なのだ。グラウンド上だけに止まらない、一緒に戦う14人との絆こそがチームを同じ方向に向かせる。そこにラグビー王国でも長らく最強チームの座を守り続けてきたクラブの強さの秘訣がある。こんな強い絆を作ることで、モウンガはBL東京というチームで、自分がどんな役割を果たすことが重要かを模索し、チームへと還元してきた。