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自分の母国を「ワタシ、コロシマス」 日本ラグビーに忠誠心を捧げ…33歳で急逝した父を追う決断

ラグビー日本代表の選手育成、強化などを目的とした「男子15人制トレーニングスコッド」合宿が5月20日から10日間に渡り長野・菅平で行われている。リーグワンプレーオフ決勝トーナメント、入替戦に出場するチームを除く5クラブから選出された33人が参加。6月の代表合宿行きを懸けたサバイバル合宿で、日本生まれ、フィジー育ちの経歴を持つWTBヴィリアメ・ツイドラキ(トヨタヴェルブリッツ)が単独インタビューに応じた。父は同じトヨタでトライゲッターとして活躍して、日本代表でも1999年ワールドカップ(W杯)に出場した故パティリアイ・ツイドラキさん。祖国フィジー代表への挑戦を捨てて、5歳で死別した父の後を追う決断と第2の祖国への思いを聞いた。(取材・文=吉田 宏)

トヨタヴェルブリッツでプレーするWTBヴィリアメ・ツイドラキ【写真:Getty Images】
トヨタヴェルブリッツでプレーするWTBヴィリアメ・ツイドラキ【写真:Getty Images】

男子15人制トレーニングスコッド合宿に参加しているWTBヴィリアミ・ツイドラキ

 ラグビー日本代表の選手育成、強化などを目的とした「男子15人制トレーニングスコッド」合宿が5月20日から10日間に渡り長野・菅平で行われている。リーグワンプレーオフ決勝トーナメント、入替戦に出場するチームを除く5クラブから選出された33人が参加。6月の代表合宿行きを懸けたサバイバル合宿で、日本生まれ、フィジー育ちの経歴を持つWTBヴィリアメ・ツイドラキ(トヨタヴェルブリッツ)が単独インタビューに応じた。父は同じトヨタでトライゲッターとして活躍して、日本代表でも1999年ワールドカップ(W杯)に出場した故パティリアイ・ツイドラキさん。祖国フィジー代表への挑戦を捨てて、5歳で死別した父の後を追う決断と第2の祖国への思いを聞いた。(取材・文=吉田 宏)

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 南海のトライゲッターが、亡き父と同じ足跡を歩む。

「選ばれた時は、すごく緊張しましたね。ずっと夢だった。なんだか体の毛がピンと立つような、信じられない感覚でした」

“日本代表”という文字は一切入らない「トレーニングスコッド」と名乗るキャンプ。だが、菅平のピッチで陣頭に立つ日本代表エディー・ジョーンズ・ヘッドコーチ(HC)のしゃがれた声を聞けば、この合宿の重要さは明らかだ。ヴィリアメ自身は摂南大時代に代表のセカンドチームに当たるジュニア・ジャパンに選ばれているが、6月9日からの代表合宿へ生き残りを懸けたサバイバルレースは、“パットの息子”にとっても、桜のジャージーに最も近づいたことになる。

「実際に練習をしてみると、クラブ(ヴェルブリッツ)のラグビーとは結構違いますね。皆が高いレベルの選手ばかり。だから自分もいつもよりハードにトレーニングに取り組まないといけない状況です。もちろん3年後のW杯が大きな目標です。父のように日本代表でプレーしたい」

 ヴィリアメが追う父パティリアイ・ツイドラキさんは、別格の快足とステップで日本ラグビー界を駆け抜けた。1995年にトヨタ自動車でプレーするため来日すると、97年には日本代表入り。当時の規約で、フィジー代表経験者ながら日本代表の資格を満たしていた。99年W杯では、全3試合中2戦で先発。ウェールズ戦でトライを決めるなど世界にスピードを印象づけた。

 アスリートとしての能力と同時に、どんな時でも明るさを失わない人間性も大きな魅力だった。選手、スタッフ、ファン誰からも「パット」と呼ばれ愛された。その一方で、ラグビーへの真摯な向き合い方も一流だった。代表入りしたパットさんを取材して、いまでも忘れない言葉がある。

 W杯を前にした99年6月に、日本代表がパットさんの母国フィジー代表と対戦する前のことだ。母国であり、パットさん自身も一緒に戦ったフィジー代表との真剣勝負。国際化が進むいまでは珍しいことではないが、当時の日本では異例の境遇に、「自分の国との試合に戸惑いはないのか」と聞くと、片言の日本語が返ってきた。

「ワタシ、フィジー、コロシマス」

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吉田 宏

サンケイスポーツ紙で1995年からラグビー担当となり、担当記者1人の時代も含めて20年以上に渡り365日欠かさずラグビー情報を掲載し続けた。1996年アトランタ五輪でのサッカー日本代表のブラジル撃破と2015年ラグビーW杯の南アフリカ戦勝利という、歴史に残る番狂わせ2試合を現場記者として取材。2019年4月から、フリーランスのラグビーライターとして取材を続けている。長い担当記者として培った人脈や情報網を生かし、向井昭吾、ジョン・カーワン、エディー・ジョーンズら歴代の日本代表指導者人事などをスクープ。ラグビーW杯は1999、2003、07、11、15、19、23年と7大会連続で取材。

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