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自分の母国を「ワタシ、コロシマス」 日本ラグビーに忠誠心を捧げ…33歳で急逝した父を追う決断

合宿で指導しているエディー・ジョーンズHC【写真:吉田宏】
合宿で指導しているエディー・ジョーンズHC【写真:吉田宏】

ジョーンズHCも潜在能力に期待「本当にポテンシャルの高い選手です」

 今回の合宿でジョーンズHCは、6月9日から始まる日本代表合宿は33人で行うと話している。この絞り込んだ人数でイングランド、イタリアなどとのテストマッチに挑み、同時にジャパンXVが別働隊としてニュージーランド先住民系代表マオリ・オールブラックスとの2試合(6月29日、7月6日)に挑む。リーグワンプレーオフを戦うトップ4らからの招集を考えると、今回の菅平から宮崎へ進めるのは10人に満たない見通しだ。ヴィリアメにとっても狭き門になるが、指揮官は日本生まれのフィジアンをこう評価している。

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「ツイドラキは27歳だが(経験値では)若い選手だと思います。でも、パワーもあるし、空中戦のスキルもある。本当にポテンシャルの高い選手です」

 指揮官にとっても、1995年にオーストラリアから来日して翌年1シーズン日本代表コーチ(FW担当)も務めた時に、トヨタ自動車、その後に日本代表で活躍していたパットさんの息子が、こうやって桜のジャージーに手の届く位置まで成長したのは感慨深い。184cm、97kgというサイズに、フィジアンならではの卓越した跳躍力を、戦術的なキックを多用する現代のラグビーで生かせれば、父とはまた異なる魅力で、正代表へとジャンプアップするポテンシャルを秘めた存在なのは間違いない。

 最終ゴールは来月からの宮崎ではなく、3年後にオーストラリアで幕を上げる夢舞台。パットの息子が次回W杯で桜のジャージーに袖を通せば、28年という時間を跨いで父と同じ30歳で祭典のキックオフを迎えることになる。

 ◇ ◇ ◇

【代表枠は9?】今回の合宿について、日本代表のエディー・ジョーンズHCは「これはあくまでもトレーニングスコッド合宿。(プレーオフ、入替戦不出場の)5チームだけから選んでいるので、自分がセレクションの対象になれるのかという意味でいい機会だと思う。そこからイングランド代表戦のメンバー23人に入るために、どれだけ上がってこられるかだ」と若手メンバーの奮起を求めた。

 菅平を合宿地に選んだことについては「このラグビーの魂のような聖地に戻ってきたいなと思っていた。トレーニング施設も素晴らしいし、ラグビーしか重要じゃないような場所だから」と説明する。

 また、合宿の狙いとしては「まずはチーム再構築する必要ある。いちばん大きいのはフィジカルのところ。1日3回の練習をしています。私たちの目指すラグビーが出来るための、本当にベストなフィジカルコンディショニングに持っていきたい。(2月の)福岡合宿では、プレーのやり方、概念を落とし込んでいくことが目的だったが、今回はさらに多くのコーチ陣も来ているので、もっと細かいところを落とし込んでいます。もちろん、どうやってイングランドに勝っていけるかも練っています」とテストマッチへの準備も進めている。

 練習メニューを見ると、ラインアウトでのレシーバー、リフター以外選手のポジショニングや、7m四方のグリッドを1人の選手がプレーするスペースと設定して、その中でどうポジショニングし、どう動くのか、そしてアタックラインに並ぶ選手の位置取りなど、1か月後に始まる代表戦に使っていくプレー、考え方も細かく落とし込み始めている。

 同HCは、6月の宮崎合宿は2027年W杯登録枠と同じ33人で行うと説明。プレーオフ組からは24人の選出を考えているため、菅平組からは9人程度が選出される見込みだ。この33人以外の編成で、マオリ・オールブラックスと2試合を行うジャパンXV(フィフティーン)が編成される方向だ。

【秘密兵器はサウナ!】 合宿を張る「ゾンタック」にサウナがオープンした。合宿に合わせて、5月19日にジョーンズHCによる“火入れ式”も行い、多くの選手も毎日利用している。

 サウナはコンテナを改装した特注品で、同時に12人ほどが入れる。宿舎本棟の目の前にあるミニグラウンドに作られ、横には既存の地下水が注がれる巨大なアイスバスもある。ゾンタックの常連でもある同HCの強い希望もあり作られたもので、「(日本語で)サイコー。朝6時に入っています。110℃ですよ。10年若返える気分。合宿が終わる頃には45歳になっているかもね」とご機嫌だ。

 不安材料があるとすれば、選手が整い過ぎてラグビーどころじゃなくなることか?

(吉田 宏 / Hiroshi Yoshida)

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吉田 宏

サンケイスポーツ紙で1995年からラグビー担当となり、担当記者1人の時代も含めて20年以上に渡り365日欠かさずラグビー情報を掲載し続けた。1996年アトランタ五輪でのサッカー日本代表のブラジル撃破と2015年ラグビーW杯の南アフリカ戦勝利という、歴史に残る番狂わせ2試合を現場記者として取材。2019年4月から、フリーランスのラグビーライターとして取材を続けている。長い担当記者として培った人脈や情報網を生かし、向井昭吾、ジョン・カーワン、エディー・ジョーンズら歴代の日本代表指導者人事などをスクープ。ラグビーW杯は1999、2003、07、11、15、19、23年と7大会連続で取材。

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