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16戦全勝リーグワン最強の野武士軍団 埼玉WKをどう止めるか、リーチマイケルが「ラスボス」と名指しした男

8日のプレーオフカンファレンスで熱弁を振るうリーチ【写真:吉田宏】
8日のプレーオフカンファレンスで熱弁を振るうリーチ【写真:吉田宏】

ブラックアダーHCとリーチ主将が見る常勝軍団・埼玉WKの強さ

 前半の反則数はBL東京の8に対して埼玉WK7。その中で、BL東京が相手の反則からスコアに繋げたのは1PGのみだったが、埼玉WKは1トライ、4PGと全てのスコアに繋げている。後半は共にPKからのアタックをトライに結び付けているのだが、BL東京が7度のPKのうち2回をトライにしているのに対して、勝者は同じ7回中3回インゴールをこじ開けている。

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 そして、リーチが語った「ディフェンスでペナルティーが少ない」という指摘は、お互いのチームがどのエリアで反則を犯したかが影響している。

 こちらも前半を見てみると、BL東京が自陣10mライン内で6度反則を犯しているのに対して、埼玉WKは同じ自陣10m内では2度のみと大きな差が生じている。勝者は、防御の局面が多い自陣ではスコアに直結する反則をせず、相手の反則に乗じてスコアに結び付けている。リーチが指摘する「規律」の本質は、チャンスを得点にする「実行力」と考えていいだろう。反則数については、リーグ戦全般を見てもBL東京の1試合平均10.75回は12チーム中8位と悪く、埼玉WKは8.56回(2位)と圧倒的に差をつけられている。ここもノックアウトトーナメントで雌雄を分ける要素に成り兼ねない。

 では、ブラックアダーHCは常勝軍団・埼玉WKの強さをどう見ているのだろうか。最初にお断りしておきたいのは、リーチ主将も含めてだが、チームがフォーカスしているのはあくまでも東京SGとの準決勝だ。決勝戦、そして埼玉WKへの対策は、あくまでも「対戦が実現したら」という前提のもとに語ってもらったことだと理解していただきたい。このような基本的なスタンスもあり、指揮官は「あまり全部はお話しできない」という断りをしながら、3月の直接対戦をこう振り返る。

「自分たちのことを、かなり学べた試合だったと思います。戦術的に自分たちを分析して、もしあの試合で勝てるなら、どういうことをやらなければいけなかったかということを考えています。埼玉WKと戦う時は、プレーをし過ぎてしまうと、やはりそこに付け込まれてしまいます」

 すこし遠巻きな言い回しをしていたが、「プレーをし過ぎない」という表現で象徴的だったプレーは、前半28分の埼玉WKがPGで3点を奪うまでに至るシーンだ。埼玉陣10mライン付近でのPKから仕掛けたBL東京だったが、相手の分厚い防御に自陣10mライン付近まで押し戻されながらの攻撃となり、最後は埼玉WK主将のHO坂手淳史の厳しいタックルに反則を犯して、そのままPGによる3点を奪われてしまった。

 BL東京がチャンスを生かし切れない痛恨のシーンは、直後の前半34分にも見られた。17次攻撃で敵陣ゴール前まで攻め込みながら、埼玉WKに反則を犯すことなく守り続けられ、最後は自分たちのハンドリングエラーで攻撃権を失っている。強豪相手に攻める意識を失わないBL東京の姿勢は評価できても、防御を崩せない我慢比べのような状況が続く中で、どんなプレーの選択肢を持って戦うかというゲームプランの柔軟さ、そしてピッチに立つ15人の戦術の共有などでは大きな課題になったはずだ。

 リーグ戦の直接対戦での反省点、課題は、決勝で再戦するときのゲームプラン、戦い方に直結するものだ。HCの言葉にも重なることだが、リーチは、自身が欠場する中で惜敗した埼玉WK戦を踏まえて、自分たちがいかに戦うべきかについて言及している。

「埼玉WKはすごくディフェンスが上手いチームなので、あまりアタックし過ぎないことが大事ですね。エリアマネジメント、あとはディフェンス、アタックのトランジション(切り替え)、そこはマストで気を付けないといけない」

 相手のミスに乗じて一気に攻撃を仕掛けてくる相手に、どう素早く、適確に対応できるのか。その意識を全員が共有できるかが、埼玉WKと渡り合うためのキーポイントになるだろう。第9節の苦杯から東芝がどこまで学びをパフォーマンスに繋げるかが勝負だが、リーチは前向きだ。

「良くなっているのは、アタックの理解度。1人ひとりが高くなっているし、後は若い選手が段階的に公式戦にも出てきて、ゲーム感覚を掴んでいる。誰がいなくなっても他の選手がカバー出来るチームになってきています。モウンガがいないときの10番、僕がいないときの8番とかもそうですね」

 リーチ自身が負傷で欠場した6試合もだが、モウンガが家族の不幸でニュージーランドに一時帰国するなど欠場した3試合でも、神戸Sとの40-40の引き分けや、三重H戦の1点差の辛勝(8-7)と苦戦を強いられている。「主力がいないから」とネガティブな解釈も出来る試合だったが、リーチ自身はあわや敗戦という状況でもチームが負けなかったことに、選手層の充実や一貫性というチームの進化を掴みとっている。

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吉田 宏

サンケイスポーツ紙で1995年からラグビー担当となり、担当記者1人の時代も含めて20年以上に渡り365日欠かさずラグビー情報を掲載し続けた。1996年アトランタ五輪でのサッカー日本代表のブラジル撃破と2015年ラグビーW杯の南アフリカ戦勝利という、歴史に残る番狂わせ2試合を現場記者として取材。2019年4月から、フリーランスのラグビーライターとして取材を続けている。長い担当記者として培った人脈や情報網を生かし、向井昭吾、ジョン・カーワン、エディー・ジョーンズら歴代の日本代表指導者人事などをスクープ。ラグビーW杯は1999、2003、07、11、15、19、23年と7大会連続で取材。

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