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「チームのため」という十字架を背負うな 世界の名ストライカーに共通、ゴール量産に必要な素養

スペインサッカーに精通し、数々のトップアスリートの生き様を描いてきたスポーツライターの小宮良之氏が、「育成論」をテーマにしたコラムを「THE ANSWER」に寄稿。世界で“差を生む”サッカー選手は、どんな指導環境や文化的背景から生まれてくるのか。今回は毎試合、ゴールを決めることが要求されるストライカーに適した素養について。「育てられない」と言われる背景にある、ゴールを奪うための感覚的な部分について考察する。

昨季スコットランド1部で27得点を奪いリーグ得点王とMVPに輝いた古橋亨梧。類稀な得点感覚を武器にセルティックで確固たる地位を築いている【写真:Getty Images】
昨季スコットランド1部で27得点を奪いリーグ得点王とMVPに輝いた古橋亨梧。類稀な得点感覚を武器にセルティックで確固たる地位を築いている【写真:Getty Images】

連載「世界で“差を生む”サッカー育成論」:ストライカーに求められる素養

 スペインサッカーに精通し、数々のトップアスリートの生き様を描いてきたスポーツライターの小宮良之氏が、「育成論」をテーマにしたコラムを「THE ANSWER」に寄稿。世界で“差を生む”サッカー選手は、どんな指導環境や文化的背景から生まれてくるのか。今回は毎試合、ゴールを決めることが要求されるストライカーに適した素養について。「育てられない」と言われる背景にある、ゴールを奪うための感覚的な部分について考察する。

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「育てられない。生まれながらのポジションだ」

 そう言われるストライカーの素養をどう見極めるべきか?

 単純な話、どの年代やどのカテゴリーであっても、ゴールを決め続けている選手は「多かれ少なかれ、ストライカーの性質に恵まれている」と言える。「ゴールを決める」という行為は、それだけ特別なことである。「仕留める」というのは「息の根を止める」という覚悟に通じ、それだけの重圧を背負うことになる。それを自然にやってのけられる精神構造は、ストライカーの資質だ。

「Instinto」

 スペイン語で、「本能」「天性」と訳される素養に恵まれている。

 体の大きさや足が速い、そういった身体的なアドバンテージは武器にはなるが、本質的ではない。ボールテクニックも、ないよりはあったほうがベターだろう。しかしながら、そうした体力や技術よりも、メンタルの適性のほうが重視されるポジションだ。

 有力なストライカーは決まって厚かましく、不敵である。見方によっては、傲岸不遜ですらある。一種のナルシズムで、その風体が「自分の手で仕留める」という行為に適しているのだろう。

 理屈っぽくない選手が多い。気分屋というのか、空腹になっただけで驚くほど機嫌が悪くなったりする。本能的な行動パターンの持ち主が多く、社会適合性は低いが、どこか可愛げがあって、憎まれない。

「俺は俺が好きなように生きる」

 かつてカメルーン代表FWサミュエル・エトーは、インタビューでそう言い放った。眩しいほどに、自分を信じられる。本人が自覚していないほどのエゴイズムが周りにも愛されたからこそ、数々の劇的ゴールを決め、UEFAチャンピオンズリーグ、リーガ・エスパニョーラなど数々のタイトルをもたらしたのだろう。

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小宮 良之

1972年生まれ。大学卒業後にスペインのバルセロナに渡り、スポーツライターに。トリノ五輪、ドイツW杯を現地取材後、2006年から日本に拠点を移す。アスリートと心を通わすインタビューに定評があり、『導かれし者』(角川文庫)、『アンチ・ドロップアウト』(集英社)など多くの著書がある。2018年に『ラストシュート 絆を忘れない』(角川文庫)で小説家としてもデビュー。少年少女の熱い生き方を描き、重松清氏の賞賛を受けた。2020年12月には『氷上のフェニックス』(角川文庫)を上梓。

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