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ラグビー日本代表は「もっと強かった」 敵将指摘の現在地、W杯で生命線となる異色の戦術とは

“機動系”のロックが局地戦で戦えるかがカギ

 5月に発表された日本代表でLOは6人。そのうち、ファカタヴァを含めた2人はFL兼務で、他の4人もワーナー以外の3人が所属チームではFLもプレーする、いわば機動系LOだ。ジョセフHCの前任者だったエディー・ジョーンズ現オーストラリア代表HCも、2015年W杯を終えて退任する前には、これからの日本の強化ポジションにLOを挙げている。昨季までの代表合宿には、202センチ・120キロのサナイラ・ワクァ(花園L)、197センチ・112キロのマーク・アボット(埼玉WK)らLO候補もいたが、スキルレベル、ゲーム理解力などで桜のジャージーには一歩及ばなかった。

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 結果的にワーナー以外は大型LOがいない現実を見据えれば、機動力、スピードに強みを持つメンバーで勝負するしか選択肢はない。FW2、3列の計5人をFL、NO8の選手で固めて、いかに相手をワークレートで凌駕し、走り勝てるかが大きなポイントになるのは間違いない。伝統的にBKのスピードに強みを持つ日本代表は、ボールを1か所に止めずに、常に動かし続けるラグビースタイルで勝負してきたが、FW2列目の選手のキャラクターを考えても、展開ラグビーが生命線になる。

 過去のW杯でも日本代表はLOの選考には腐心してきた。最近の大会を振り返ると、LOでプレーした主なメンバーはトンプソン・ルーク、大野均、ヴィンピー・ファンデルヴァルト、そして現在もメンバー入りしているジェームス・ムーア(浦安D-Rocks)らだ。全員、対戦相手のLOよりも小兵で、世界の強豪国でプレーする機会があればLOではなくFLをさせられるサイズでありタイプだ。だが忘れてはいけないのは、トンプソン、ファンデルヴァルトらが、世界クラスの正統派LOに負けないほど体を張り、密集戦に頭を突っ込んで押し込み、スクラムの2列目からプッシュし続けてきたことだ。

“機動系”の選手であっても、LOでプレーする限りは、トンプソンらが前回2019年大会で見せたような体を張った局地戦でも仕事ができなければ、フランスでの8強突破へ不安材料になりかねない。ファカタヴァはもちろんだが、前回W杯ではタックルで奮闘したムーア、トンガ戦で4年ぶりの代表復帰を果たしたヘル・ウヴェ(クボタスピアーズ船橋・東京ベイ)らFL系LOが、どこまでフィジカルバトルで張り合えるかは、W杯で日本が再び躍進するためのポイントになる。

 機動力重視のLOでも、スクラムは軽視できない。19年W杯の日本代表の躍進も、安定したスクラムからのアタックが武器になった。今回のトンガ戦でも、前半20分のトライはスクラムが起点。ファカタヴァのようにFLでプレーしてきた選手が、スクラムをどこまで安定して押せるかは軽視できないが、押してもらう側のFW第1列のHO堀江翔太(埼玉WK)は、ファカタヴァのスクラムワークをこう証言している。

「スクラムはどんどん良くなっている。試合、練習ごとに慎さん(長谷川アシスタントコーチ)を中心に、前3人とLOでああしてくれ、こうしてくれと話し合っている」

 同じくHOの坂手淳史(埼玉WK)も「アマトは言われたことを真面目に、しっかりやるんです。スクラムで言われたことは、たぶん彼自身すぐには分からないところもあると思うが、ただ言われたことをその場でやる、やり続ける忍耐力は凄いので、いい押しを貰えています」と愚直な取り組みを評価する。

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吉田 宏

サンケイスポーツ紙で1995年からラグビー担当となり、担当記者1人の時代も含めて20年以上に渡り365日欠かさずラグビー情報を掲載し続けた。1996年アトランタ五輪でのサッカー日本代表のブラジル撃破と2015年ラグビーW杯の南アフリカ戦勝利という、歴史に残る番狂わせ2試合を現場記者として取材。2019年4月から、フリーランスのラグビーライターとして取材を続けている。長い担当記者として培った人脈や情報網を生かし、向井昭吾、ジョン・カーワン、エディー・ジョーンズら歴代の日本代表指導者人事などをスクープ。ラグビーW杯は1999、2003、07、11、15、19、23年と7大会連続で取材。

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