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W杯まで「まだ7週間ある」 世界最強“2軍”に2連敗も…ラグビー日本代表が見出した光明とは

試合巧者のオールブラックスXVが効果的なトライを連発

 この一連のスコアで、オールブラックスがゲームで重視している秘訣が脳裏に思い浮かんだ。これは埼玉パナソニックワイルドナイツを率いるロビー・ディーンズ監督から聞いた話だ。過去にカンタベリー・クルセイダーズをNZ最強チームに鍛え、オールブラックスのコーチングスタッフも務めた名将は、世界最強軍団がゲームを進めるなかで重視していることをこう語っていた。

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「彼らは試合中でもスコアすることを強く意識し、集中する時間帯がある。それは対戦相手がスコアした直後や、自分たちがスコアした後。それと前後半の開始直後や前半終了前だ」

 ラグビーのような流動的にゲームが展開する競技では、いつ何時でもチャンスがあればトライやゴールが欲しいはずだが、ロビーさんが指摘する時間帯は単なる点数だけではなく、相手が受ける精神的なダメージが大きいという点で、より意味のあるスコアになるというのだ。名将は「例えば相手がトライを取りたい時に、逆に自分たちがトライすれば、心理的には自分たちの奪った5点と、相手が取ろうとして逃した5点と合わせて10点分の効果がある。キックオフ直後や前半終了直前も、同じように相手にダメージを与えることになる。オールブラックスというチームは、そのような相手の心理も考えながらプレーしているチームだよ」と笑顔で語っていたが、前半12分の一撃は、まさに“オールブラックスの掟”通りの効果倍増のトライだった。

 同じ現象は、25分の日本の初トライ直後にも見られた。FB松島幸太朗(東京サントリーサンゴリアス)のスピードで奪ったトライにチームもスタンドも盛り上がるなかで、NZ代表キャップ「18」を持つオールブラックスXVのSH(スクラムハーフ)ブラッド・ウエバーは、スクラムからこちらも18キャップのCTB(センター)ジャック・グッドヒューを突っ込ませて、そこに集まった日本防御が次の展開ができない素早さで、CTBビリー・プロクターにラストパスを送って、瞬殺でトライを取り返した。これが前半30分の出来事だった。

 ロビーさんの指摘は前半終了直前と、後半キックオフ直後にも起きている。前半残り2分という時間に、オールブラックスXVが自陣22メートルライン内から日本の不意を突くように、左に大きく展開して一気にインゴールを陥れた。後半3分には、日本のCTBディラン・ライリー(埼玉WK)が無造作に上げたキックを捕球したFBラブが、自分の蹴り上げたパントを自らキャッチ。間髪入れずにグラバーキックを蹴り込むと、それに反応したWTBのAJ・ラムが足にかけ、そのまま追走、捕球してインゴールに飛び込んだ。

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吉田 宏

サンケイスポーツ紙で1995年からラグビー担当となり、担当記者1人の時代も含めて20年以上に渡り365日欠かさずラグビー情報を掲載し続けた。1996年アトランタ五輪でのサッカー日本代表のブラジル撃破と2015年ラグビーW杯の南アフリカ戦勝利という、歴史に残る番狂わせ2試合を現場記者として取材。2019年4月から、フリーランスのラグビーライターとして取材を続けている。長い担当記者として培った人脈や情報網を生かし、向井昭吾、ジョン・カーワン、エディー・ジョーンズら歴代の日本代表指導者人事などをスクープ。ラグビーW杯は1999、2003、07、11、15、19、23年と7大会連続で取材。

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