恩師オシムに再会するのが「怖かった」 プロ20年目、37歳の水野晃樹が今もJ3で戦い続けるワケ
恩師の前で「不甲斐ない自分を見せられなかった」
スパイクを脱ぐ日は必ず巡ってくるが、本人は今も「サッカー選手後」をイメージできないという。セカンドキャリアという言葉がピンとこない。首の皮一枚で無骨に生き抜いてきた男は、今しか生きられないのだ。
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「ナビスコ杯、J2、J1、天皇杯と優勝を経験したし、昇格や残留もやってきたんで、あとはJ3で優勝したいですね。ずっとサッカー選手の人生だから、その後は何も分かんない(笑)。指導者ライセンスはB級まで持っていますけど、引退後のことは何も決めていません。ただ、わがまま自由にサッカー選手をやらせてもらってきたんで、引退後は自分よりは家族へ矢印を向けようって考えています」
インタビューの最後に、用意していた質問を投げた。
――オシムさんに再会できるとしたら、何を伝えたいですか?
水野は、一番時間をかけて答えている。
「『お前は何を目指しているんだ?』って言われそうですね(笑)。そこまでして、サッカーを続けるのか、サッカーが好きなのか。オシムさんはベテランを切っていった印象なので、この年になってもJリーガーってどう思われるんですかね? 実は、オシムさんに再会できる機会はあったんです。でも、怖かったというか、“今の立場で会えないな”って思ってしまって。不甲斐ない自分を見せられなかった。今はなんで会いに行かなかったんだって、後悔しています。会いたい人には会える時に会うべきですね」
20年間、シビアなプロサッカー選手の世界を生き抜いてきた男の純粋さを、オシムが笑うはずはない。
(小宮 良之 / Yoshiyuki Komiya)