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名門・清水商の練習は「地獄」 高校まで無名の水野晃樹、挫折から這い上がったプロ人生の原点

競争の激しいプロサッカーの世界で、20年以上にわたってキャリアを積み重ねられるのは限られた選手にのみ与えられる栄誉だ。今季からJ3のいわてグルージャ盛岡に所属する37歳の元日本代表MF水野晃樹も、2004年に高卒ルーキーとしてJリーグデビューを果たして以来、プロサッカー選手として20年目のシーズンを戦っている。だが、その道のりは決して平坦なものではなかった。名将からの寵愛を受けて飛躍するも、初の海外移籍で挫折を味わい、度重なる膝の怪我にも悩まされた。苦難を乗り越えながら駆け抜けた日々に、何を感じ、どんな答えを見つけてきたのか。第1回ではプロでの成功の土台が築かれた、名門高校時代の原点を追った。(取材・文=小宮 良之)

2008年にスコットランドの名門セルティックに移籍した水野晃樹。2年半にわたり海外でプレーした【写真:Getty Images】
2008年にスコットランドの名門セルティックに移籍した水野晃樹。2年半にわたり海外でプレーした【写真:Getty Images】

水野晃樹「名将に愛された男の20年」第1回、少年時代から這い上がり続けたサッカー人生

 競争の激しいプロサッカーの世界で、20年以上にわたってキャリアを積み重ねられるのは限られた選手にのみ与えられる栄誉だ。今季からJ3のいわてグルージャ盛岡に所属する37歳の元日本代表MF水野晃樹も、2004年に高卒ルーキーとしてJリーグデビューを果たして以来、プロサッカー選手として20年目のシーズンを戦っている。だが、その道のりは決して平坦なものではなかった。名将からの寵愛を受けて飛躍するも、初の海外移籍で挫折を味わい、度重なる膝の怪我にも悩まされた。苦難を乗り越えながら駆け抜けた日々に、何を感じ、どんな答えを見つけてきたのか。第1回ではプロでの成功の土台が築かれた、名門高校時代の原点を追った。(取材・文=小宮 良之)

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「水野晃樹=オシムチルドレン、って語られることになるんでしょうね」

 水野晃樹はそう言って、自身のプロサッカー選手人生を振り返った。ジェフユナイテッド市原(現・千葉)での名将イビチャ・オシムとの出会いは、切っても切り離せない。まさに水野という選手を象徴するのだろう。

 しかしプロ選手20年目、その等式だけで語られるべきではない。

 水野がなぜ無名選手から這い上がってプロになり、オシムという偉大な人物に愛されたのか。そしてセルティックでの“無謀”と言われた挑戦に臨み、10チーム以上を渡り歩き、地域リーグからJリーガーに復活できたのか。長くプロサッカー選手を続けられた理由があるはずだった。

「今年、Jリーグ通算200試合を達成できました。同年代で続けている選手と比べれば、“たかが”という記録ですよ。400試合以上の選手もいますから。でも、長く選手を続けたから出会えた人たちもたくさんいて、ここにいられるのは偶然ではないんです」

 盛岡でプレーを続ける水野が見てきた風景を言語化し、彼が心に刻んだ言葉を彩ることで、その濃厚なサッカー選手人生に迫った。

 1985年9月、水野は静岡県清水市(現・静岡市)に生まれている。3歳でボールを蹴り始めたという。しかし当初はどれだけやってもリフティングが5回続かず、一時は練習に通うのもやめそうになった。

「もう嫌だって我慢できなくなって、泣いていましたね(笑)。続けられた理由は、負けたまま終われないでしょって。その負けず嫌いだけは当時からありました」

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水野 晃樹

サッカー元日本代表 
1985年9月6日生まれ。静岡県清水市(現・静岡市)出身。清水商業高(現・清水桜が丘高)を卒業後、2004年にジェフユナイテッド市原(現・千葉)に加入。イビチャ・オシム監督の指導の下、2年目の05年に出場機会を増やすと、U-20日本代表にも選出されオランダでのワールドユース(現・U-20W杯)に出場した。07年にはJ1リーグで29試合9得点の活躍を見せ、日本代表にもデビュー。08年1月、セルティックへ初の海外移籍を果たすが怪我もあり不本意な結果に。10年6月に柏レイソルへ移籍して国内復帰を果たすと、8クラブを渡り歩き、今季からJ3のいわてグルージャ盛岡に所属している。

小宮 良之

1972年生まれ。大学卒業後にスペインのバルセロナに渡り、スポーツライターに。トリノ五輪、ドイツW杯を現地取材後、2006年から日本に拠点を移す。アスリートと心を通わすインタビューに定評があり、『導かれし者』(角川文庫)、『アンチ・ドロップアウト』(集英社)など多くの著書がある。2018年に『ラストシュート 絆を忘れない』(角川文庫)で小説家としてもデビュー。少年少女の熱い生き方を描き、重松清氏の賞賛を受けた。2020年12月には『氷上のフェニックス』(角川文庫)を上梓。

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