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日本の子供の習い事への熱量は「欧州では考えられない」 モラス雅輝「1人40万で海外遠征も…」

ドイツ中堅クラブのU-18監督は月6万円程度のパートタイム契約

 実はあまり知られていないことだが、日本ほどサッカー関係の仕事で多くの人が稼げている国はないようだ。

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「Jクラブではアカデミーのコーチや普及部門の人たちまでフルタイムの仕事にしていて、本当に驚きました。高校や大学でも、コーチ陣までサッカーの指導だけで食べている人たちがいますよね。でもオーストリアやスイスに、アカデミーの指導をフルタイムの仕事にしているコーチはほんのひと握りですし、ついこの間まではバイエルンのU-14のコーチでもプロ契約ができていませんでした。ドイツの中堅クラブのU-18監督なら、月に6万円程度のパートタイム契約だと思います。確かに日本の指導者はサッカー以外のことも含めて仕事が多岐にわたるそうですが、欧州で若い指導者に日本の状況を伝えると、みんな『日本へ行きたい』と言いますよ」

 ただし、これだけ人口も多く、育成に投資できている反面、明白な課題も見えている。

「もしかすると日本の育成が大きくステップアップするためのカギは、食事と睡眠なのかもしれませんね」

 欧州生活が長いモラスの耳にも、当然高体連をはじめとする日本の実情は入ってきている。

「日本の高校生のトレーニングの多さは、よく聞きます。ドイツやオーストリアの指導者たちは『これじゃ、みんなサッカーを辞めちゃうよ』と話しています。朝練習をしてシャワーを浴びると、もう朝食を取る時間がない。結局シャワールームから教室までダッシュで向かい、その間におにぎりやパンを口に放り込むしかないそうで、女子でもそんな状況の学校があると聞きました」

 多くの高校の現場では、まだまだ身体作りやコンディション作りに科学的な根拠が入り込む余地がない。

「陸上競技やカヌーの選手たちが、3日間でも間違った食事をしたら即座に成績に表れるはずです。でもサッカーだと、なかなか見え難い。ただしザルツブルク時代のラルフ・ラングニック(現オーストリア代表監督)も睡眠コーチを雇っていたくらいで、睡眠はアスリートにとってとても重要です。日本もどこかのトレーニングの時間を削って睡眠に充てたら、もっと体格の良い選手が増えてくるのかもしれませんね」

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モラス 雅輝

ザンクト・ペルテン テクニカルダイレクター 
1979年1月8日生まれ。東京都調布市出身。16歳でドイツへ単身留学、その後指導者の道へ進む。オーストリアサッカー協会のコーチングライセンスを保持し、男女のトップチームや育成年代を指導してきた。2008年途中から10年まで浦和レッズのコーチ、19年6月からはヴィッセル神戸コーチとなりクラブ史上初の天皇杯優勝を経験した。21年からは再びオーストリアに戻り、22年7月にザンクト・ペルテンのテクニカルダイレクターに就任した。

加部 究

1958年生まれ。大学卒業後、スポーツ新聞社に勤めるが86年メキシコW杯を観戦するために3年で退社。その後フリーランスのスポーツライターに転身し、W杯は7回現地取材した。育成年代にも造詣が深く、多くの指導者と親交が深い。指導者、選手ら約150人にロングインタビューを実施。長男は元Jリーガーの加部未蘭。最近、選手主体のボトムアップ方式で部活に取り組む堀越高校サッカー部のノンフィクション『毎日の部活が高校生活一番の宝物』(竹書房)を上梓。『日本サッカー戦記~青銅の時代から新世紀へ』『サッカー通訳戦記』『それでも「美談」になる高校サッカーの非常識』(いずれもカンゼン)、『大和魂のモダンサッカー』『サッカー移民』(ともに双葉社)、『祝祭』(小学館文庫)など著書多数。

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