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「日本の恥」と抗議殺到 劣悪だった埼スタの芝、日韓W杯へ一変させた裏方の奮闘

最悪の事態へ備えて宮城スタジアムから芝を買い付ける

 その頃、筆者は地元紙記者として芝の解説記事を計画し、芝の管理責任者だった輪嶋正隆さんへの取材を事業推進本部に依頼。しかし「ワールドカップが終わるまで、芝に関する取材はご遠慮ください」と断られた。当時、5人の有識者で構成する“埼玉スタジアム2002アドバイザー”という役職を埼玉県から委嘱されていた筆者だが、優遇してはもらえなかった。それほど過敏になっていたのだ。

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 日本サッカー協会は02年1月の理事会で、埼玉スタジアムの低質な芝の状態を議題に上げた。これを受けて森健児専務理事や高田豊治施設委員長らが2月5日、埼玉県芝生検討委員会の興水肇明治大学農学部教授を伴い、視察に訪れた。森専務理事は「日本のワールドカップ第1戦の会場でもあり、国民の関心はとても高い。施設委員会としても心配になり、状況を把握したかった」と述べた。

 点検した興水教授の助言に沿い、芝の根付きを盤石にする管理・育成方法の徹底を確認。高田委員長は「適度な散水と肥料成分の再検討が今後の最重要案件だ」とした上で、「リスクを抑えるため、芝の張り替えも視野に入れるよう埼玉県に要望した」と明かした。同委員長は「水分過多になると根が下に伸びないので、散水コントロールをきちんとやらないといけない」と解説し、散水制御の重要性を何度も説いた。

 00年4月に開場した日韓W杯会場の宮城スタジアムは、万が一を考えて芝を担保していたが、順調に育ったことで当面は必要なくなった。そこへ埼玉県の下命を受けた船越さんが02年3月28日、約8000平方メートル分の芝を買い付け、張り替えという最悪の事態に備える。

 植物はひと冬越すと強くなるため、秋に播種し春から使うのが理想とされるが、埼玉スタジアムは01年3月26日に種を蒔いた。1年中常緑な寒地型芝草のケンタッキーブルーグラス、ペレニアルライグラス、トールフェスクという3系統5種類を混合。ピッチの下には暑気は冷水、寒気には温水を流し、芝の生育に適した温度を保つ地温コントロールシステムを導入したとあり、根の発育不順はグラウンドキーパーらの想像の範囲をはるかに超えていた。

 手順のどこかにミスがあったのだろうか。屋根の問題や日照、通風など気象条件も指摘されたが、船越さんは「今でも明確な原因は分かっていませんが、水のやり過ぎは当初から気になっていました」と言う。

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