突き動かす亡き親友・平尾誠二への思い 日本ラグビーの未来担うリーグワン理事長の情熱

今の時代だからこそラグビーのリアルな感覚は大事
子供たちの普及・育成への強い思いには、ビジネスマンを離れた実体験が反映されている。そこにあるのは、父親としての眼差しだ。
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「長男が今、中学生なんです。小学校では野球をやっていました。でも少年野球って、すごくチーム運営や指導が長い時間をかけてでき上がっていて、すべてを指示通りにやらないといけない。アメリカのスポーツという性格もある。息子の試合を見に行った時、『チラチラとベンチばかり見てねぇで、自分の頭で考えろ!』と怒鳴ったら、その晩は息子が口きいてくれなかった。もちろん野球も素晴らしいスポーツです。でもラグビーって、フィールドに出ればすべて自己責任じゃないですか。あの感覚、自分の頭で考えて何かをやることって、今の時代でも大事じゃないかな。
息子は中学ではラグビーを始めています。ラグビーをやりながら、それでもゲームやるでしょ。デジタルの世界です。でも、膝小僧擦りむいて、勝った負けたで、この前も泣いたりしていたけど、仲間ができて、すごくリアルでね。僕も前職では、eスポーツに関わっていた立場ですが、今の時代だからこそリアルなチームスポーツで汗を流したり、勝ち負けで泣いたり笑ったり、友だちとハイタッチするようなことが、すごく大事だと思います。いろんな公民館に行って、お父さんお母さんに『お子さんにラグビーやらせましょう』って講演したいくらいですよ」
厳しい実業界の最前線を走り続けながら、生産性という価値観とは別世界のようなラグビーが子供たちにもたらす“楕円の果実”を、このビジネスマンは忘れていない。ラグビー界の伝説の男が残した金言を思い出す。
「ラグビーは少年をいち早く男にし、そして男に少年の心を宿す」
1970~80年代に活躍したフランス代表FLジャン=ピエール・リーヴの言葉だ。20年以上、取材でラグビーフィールドを渡り歩くなかで、こんな男たちに何度も出会った。故人ばかりだが、玉塚理事長の慶大時代の監督だった上田昭夫さん、早大のタックルマン・石塚武生さん、平尾さんもダンディさの中に少年の面影を湛えていた。
大人の決断力・判断力と、ラグビー少年が持つ夢を貪るような熱と欲望の両方を持ち合わせる男たち――。日本ラグビーの未来を担う新リーグのトップにも、同じ匂いがする。
(吉田 宏 / Hiroshi Yoshida)
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