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卓球の鬼・平野早矢香が感銘を受けた“雀鬼”の直感力「その言葉が心に残っています」

現役時代に卓球界という枠を越えてアドバイスを求めた人物とは?【写真:小倉元司】
現役時代に卓球界という枠を越えてアドバイスを求めた人物とは?【写真:小倉元司】

情報が溢れる現代「どこをどうやって採り入れていくかは自分で見極める」

 瞬時に迷わず決断するために、現役時代は卓球界という枠を越えて他ジャンルの第一人者にアドバイスを求めた。その一人が、麻雀界の巨匠・桜井章一氏だ。20年間無敗という伝説を持ち、“雀鬼”とも呼ばれる桜井氏に教えを請うきっかけとなったのは、知人からもらった桜井氏の著書だった。

「桜井さんの本を読んで、すごく感銘を受けたんです。『勝負に対して、こういう発想を持っている人がいるんだ』って驚いて、さらに4、5冊読みました。そこから桜井さんが経営なさる雀荘に手紙を書いたり電話を掛けたりして『ぜひお会いしたい』と。半年後くらいにようやくお時間をいただき、お会いすることができました」

 フィールドは違えど、百戦錬磨の勝負師。「勝負に対する心構えを教えてもらいたい」と告げると、いろいろな角度から興味深いアドバイスを受けたという。その中でも最も心に残っているのが「流れ」の話だった。

「桜井さんに言われたんです。『早矢香ちゃん、いろいろ考えているみたいだけど、試合は考えることよりも流れを感じることが大切だよ』って。『流れを感じたり、相手を感じたりするんだ』と言われて、分からなくはないけど、目には見えないものだから難しいんですよね。でも、まずは試合の流れに目を向けるところから挑戦してみました。全部が全部できたわけではありませんが、現役時代を振り返ると『あそこで流れが変わったな』というタイミングが確かにある。なので、その言葉がすごく心に残っています」

 身長158センチと世界の舞台では小柄な体を合理的に使える方法を求め、古武術の甲野善紀氏に教えを請うたこともある。「強くなれれば何をやってもいいと思っていた」と卓球界の外に求めたアドバイスから多くの気付きを得た。

「卓球界のレジェンドの方々からアドバイスをいただくことも大切です。ただ、違う分野の方は卓球の動きなどを分かっているわけではないけれど、それまでにない発想や視点で話をしていただける。卓球の常識の中で毎日練習しているよりも、違う分野の方からアドバイスを受けると良くも悪くも気付きがあります。そして、ここが大事だと思うんですけど、そのアドバイスを鵜呑みにするのではなく、卓球で使えるもの、卓球には合わないもの、あるいは今の自分には難しいもの、といった判断をすること。できるだけ広く話を聞いた方がいいと思いますが、どこをどうやって採り入れていくかは自分でしっかり見極めていかないと崩れてしまう。そこが難しいところでもあるんですけど」

 昨年来のコロナ禍により、社会のオンライン化が急激に進んだ。情報は加速度的に更新され、抱えきれない量が溢れている。そんな現代社会を生き抜くには、自分にとって何が必要で何が不必要なのか、判断する力や決断する力は不可欠だ。「後悔しないと思える判断を、最後に自分で下せるか。これって大事ですよね」。5歳から2016年に引退するまで26年続けた卓球で培われた能力は、戦いの舞台から離れた今もなお、生かされている。

(THE ANSWER編集部・佐藤 直子 / Naoko Sato)

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