なぜ五輪にボランティアと聖火が必要なのか 野口みずきがギリシャで触れた不可欠要素
「THE ANSWER」は東京五輪の大会期間中「オリンピックのミカタ」と題し、競技の新たな知識・視点のほか、平和・人権・多様性など五輪を通して得られる様々な“見方”を随時発信する。今回は「THE ANSWER スペシャリスト」として陸上界の話題を定期連載している2004年アテネ五輪女子マラソン金メダリストの野口みずきさん。大会開催に欠かせないボランティアの存在意義とは何か、日本人1番手で聖火ランナーを務めたからこそ感じる聖火リレーの意義とは何か。「選手の競技中はいろんなことを忘れてほしい」という願いを明かした。(構成=THE ANSWER編集部・浜田 洋平)
「THE ANSWER的 オリンピックのミカタ」#66
「THE ANSWER」は東京五輪の大会期間中「オリンピックのミカタ」と題し、競技の新たな知識・視点のほか、平和・人権・多様性など五輪を通して得られる様々な“見方”を随時発信する。今回は「THE ANSWER スペシャリスト」として陸上界の話題を定期連載している2004年アテネ五輪女子マラソン金メダリストの野口みずきさん。大会開催に欠かせないボランティアの存在意義とは何か、日本人1番手で聖火ランナーを務めたからこそ感じる聖火リレーの意義とは何か。「選手の競技中はいろんなことを忘れてほしい」という願いを明かした。(構成=THE ANSWER編集部・浜田 洋平)
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私は世界選手権、世界ハーフなどの世界大会を経験しましたが、やっぱり五輪は特別な舞台でした。注目度、規模が違う。大会の雰囲気やカメラの数も全く違った。前年の世界陸上は陸上に特化した大会。銀メダルで注目されましたが、五輪で金メダルを獲って帰国したときはビックリするくらいの人数で、空港に降りた瞬間から世界が変わっていました。
何よりアテネで行われたことが特別。(マラソンの由来となった)マラトンのコースを走れたことにすごく運命的なものを感じました。そこで金メダルを獲って何とも言えない気分。独特の雰囲気とともに、オリンピック発祥の地で走れたことに喜びを感じた。その雰囲気をもう一度味わいたいということで、引退するまで何度も何度も夢を見続けた。それくらい魅力のある大会です。
大会にはボランティアの方々が欠かせません。間近でトップ選手のパフォーマンスを見られて、サポートできる。なかなかできない経験です。ボランティアがいてくださるおかげで選手は競技ができ、集中できます。
でも、それだけじゃないんです。
私が金メダルを獲得した直後、取材対応を終えてドーピング検査の場所に行く時だったかな。ギリシャ人のボランティアの方が誘導してくれた。大学生くらいのお兄さん。日本語で「あなたは英雄です」って言ってくれたんです。おそらく日本語を勉強している方。言われたときは最高に嬉しかったですね。
しかも、オリンピック発祥の地のギリシャの方。とってもかっこよくて(笑)。ギリシャ神話に出てきそうな男性で、すごく誇らしく思いました。スタンドには私の家族やチームがいて、近くにもボランティアの方々がいてくださった。レース後は私に少しでも会わせてあげようと誘導してくれたようです。
五輪では、選手もボランティアも一つになれます。アスリートが競技を終えた後は称えてくれるし、私たちもサポートしてくれたことに感謝する。五輪のマークは5つの輪がありますが、あれが一つの輪になるようなもの。そこにいるボランティア、応援してくださる方、大会関係者、アスリートもみんなが一つになれる。そんな雰囲気を感じられる。いわゆる平和の祭典です。
今大会、コロナ禍でなかなか触れ合うことはできませんが、ボランティアの方々には五輪の空気感を味わっていただきたいです。サポートすることに誇りを持ってほしい。開会式でドラゴンクエストの音楽を聞いた時、選手たちがみんな勇者に見えてきました。この状況下で参加してくれたボランティアも一人の勇者。よくぞサポートしてくれているなって思っています。