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なぜ野球アカデミーに「自習時間」が必要なのか 机に向かう40分が持つ意味

「机に向かう40分」が目指す「課題解決力」と「実行力」の育み

 レッスンレポートを書き終えると、子どもたちは持参した教材で自習を始める。30分間の自習時間が目指すものは、「自ら課題を設定して解決する力」と「決めた目的を確実に実行する力」を育むことだ。ここで取り組む課題は、学校の宿題、塾の課題、あるいは自分で選んだドリルや問題集など自分次第。分からない問題があれば、必要に応じて自習室スタッフがサポートするが、あくまで主体は子どもたち。「?しなさい」という指示語は聞こえない。

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 BUベースボールアカデミーでは入会の際、子どもたちには「どんな野球選手になりたいか」「目標達成のための課題(打撃・捕球・送球・投球・人間力)」についてシートに書き込んでもらい、保護者には自習室での学習サポートの目安として進学に関する考えを共有してもらっている。受験予定の有無、進学先は野球優先で決めるのか、学業優先で決めるのか。それぞれの家庭のニーズに合わせた形でサポートを進めていく。

 だが、野球が得意な子どもは野球だけに専念すればいいという時代は終わった。プロ野球選手になったとしても、他の職業に就くことになったとしても、求められるのは自分で考え、行動できる人材だ。レッスンの振り返りを含む自習時間の中で、課題と向き合い解決方法を考える癖をつけることが大切になる。

 ベースボールアカデミーの他にも、ラグビー、アイスホッケー、ランニングパフォーマンスという複数競技のアカデミーを運営する「ブリングアップ・アスレチック・ソサエティー(BUAS)」では、「一度限りの人生で最高の決断ができる人間形成」を目指している。それぞれの競技を通じて、仲間を思いやる気持ち、コミュニケーションを取る力、主体的に考えて行動する姿勢などが身につき、子どもたちの人間力がアップすることが狙いだ。各競技が持つ特性が違うため、アプローチ方法はさまざま。「机に向かう40分間」はベースボールアカデミー独自の方法だ。

 埼玉戸田校はスタートから2か月ほどしか経っていないが、早くも効果は現れ始めている。中学2年生のアカデミー生は5月には目指す野球選手像として「打てて、守れて、走れる選手」と書いていたが、2か月後には「チームのみんなに声をかけて、チームを盛り上げられる選手」と記入。打撃の課題は「右肩が下がらないようにする」と書いていたものが、「インコースをしっかり体の回転を使って打つ」とより具体化されるようになった。毎回、自習室で行うレッスンの振り返りを通じて、自分の考えや感覚を言語化する力がついてきた証だろう。

 近年は、日本各地で新たな取り組みに挑戦する指導者が増えている。かつてのスパルタ方式から大きく変わり、ウォーミングアップや雨の日には他競技をプレーしてみたり、座学の時間を採り入れてみたり、時代に即した形が試される中、BUベースボールアカデミーが実践する「机に向かう40分」は新たな形として注目を集めそうだ。

(THE ANSWER編集部・佐藤 直子 / Naoko Sato)

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