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いじめ、学業からたばこ問題まで… 生徒も保護者もサインする「米国の部活の誓約書」

保護者用にもあるルール「アルコールやたばこを持ち込まない」

 メジャーリーグなどを取材する私は、時々、このような記事も書く。

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「米大リーグ機構は、○○選手に対して5試合の出場停止処分を科した。●日の○○戦で審判に激しく詰め寄った。○○選手は異議申し立てを表明。最終決定するまで処分は適用されない」。これと同じように、学校運動部の生徒にも異議申し立ての権利があるということだ。

 運動部のルールに同意、署名するのは参加する生徒たちだけではない。保護者用のルールもある。観客席での保護者の問題行動を、ルールを事前に示すことで抑止するのが目的だ。

 こちらも学校によって、細かい違いはあるが、一例をご紹介したい。

・審判に敬意を払う。
・相手チームに敬意を払う。
・勝敗ではなく、生徒の成長によって、成功の目安とする。
・ポジティブなロールモデルとしてスポーツマンシップを促進する。
・コーチと話をしたいときには、適切な時間と場所を選ぶ。試合直前、直後の話し合いは避ける。
・高校運動部(ユーススポーツ)の試合を観戦しているということを忘れない。
・アルコールやたばこを持ち込まない。

 こういったものに署名して提出する。

 私が保護者として署名したものも、上記のものと似たようなものだが、規則を守らなかった場合には、どのような罰を与えるかは書かれていなかった。ただし、観客席で規則違反をした場合には、審判やコーチから退席、退場を命じられることもある。規則という基準があるので退席を命じやすい。保護者や観客用ルールをスタンドに張り出しているところもあり、違反した場合は退場と明記されているものもある。

 私がインターネットで検索した保護者向け規範には、違反の回数により保護者に一定期間、観戦停止させるものや、違反の回数が増えると、「あなたの子どもがこの組織でスポーツをすることも停止させる」という厳しい文言もあった。

 米国は保護者に対しても、ここまで徹底しており、すばらしいと思われるかもしれない。しかし、20年ほど前に保護者がコーチを子どもたちの目の前で殴り殺す事件あった。それ以降も試合で興奮した保護者同士がスタンドで罵り合う、審判の襟首をつかむといった問題行為を時々、ニュースやSNSの動画投稿で目にする。

 そのような酷い行動がなくならないのなら、紙に書かれた規則に同意し、署名をすることにどれほど抑止力があるのか、と疑問もわいてくるだろう。それでも、試合の興奮ではなく、冷静な状態で、規則を一度でも読むというのは、無駄ではないと私は感じている。参加している全ての保護者が目を通していることで、長期的にみれば、審判や相手チームを罵ることは許されないというカルチャーを作り出すことにつながるのではないか、と期待しているからだ。

(谷口 輝世子 / Kiyoko Taniguchi)

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谷口 輝世子

デイリースポーツ紙で日本のプロ野球を担当。98年から米国に拠点を移しメジャーリーグを担当。2001年からフリーランスのスポーツライターに。現地に住んでいるからこそ見えてくる米国のプロスポーツ、学生スポーツ、子どものスポーツ事情を深く取材。近著に『なぜ、子どものスポーツを見ていると力が入るのか――米国発スポーツ・ペアレンティングのすすめ』(生活書院)ほか、『帝国化するメジャーリーグ』(明石書店)『子どもがひとりで遊べない国、アメリカ』(生活書院)。分担執筆『21世紀スポーツ大事典』(大修館書店)分担執筆『運動部活動の理論と実践』(大修館書店)。

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