三浦龍司に「世界を見せてもらった」 東京五輪で決意新た、順大監督が描くパリへの道
選手1人ひとりの才能を見抜き、個を伸ばしていく陸上指導者の、独自の育成理論やトレーニング法に迫るインタビュー連載。東京五輪3000メートル障害で7位入賞の三浦龍司は、日本陸上界にとっての期待の星だが、順天堂大学で指導する長門俊介監督はどのようなプランで「日本の宝」を育ててきたのか。東京五輪当時を振り返りながら、2年後のパリ五輪に向けたビジョンを語ってくれた。(取材・文=佐藤 俊)
連載「陸上指導者の哲学」、順天堂大学陸上部・長門俊介監督インタビュー第2回
選手1人ひとりの才能を見抜き、個を伸ばしていく陸上指導者の、独自の育成理論やトレーニング法に迫るインタビュー連載。東京五輪3000メートル障害で7位入賞の三浦龍司は、日本陸上界にとっての期待の星だが、順天堂大学で指導する長門俊介監督はどのようなプランで「日本の宝」を育ててきたのか。東京五輪当時を振り返りながら、2年後のパリ五輪に向けたビジョンを語ってくれた。(取材・文=佐藤 俊)
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7月のオレゴン世界陸上に出場した三浦龍司(順天堂大3年)は、昨年の東京五輪3000メートル障害で7位入賞を果たし、世界と戦えることを証明した。彼を指導する長門俊介監督は、自国開催の五輪へ向けてどのようにプランニングしていったのだろうか。
三浦が順天堂大学に入学したのは、2020年4月だ。コロナが猛威を振るい、軒並み大会が中止になり、大学の部活動も停止になるなど影響が出た。東京五輪も1年延期になったが、三浦にとってはそれが大きなチャンスになった。
「高校時代、三浦をスカウティングしていた時は、彼自身、東京五輪はあまり意識していなかったと思います。塩尻(和也/現・富士通)が(2016年の)リオ五輪の年を迎える時も4年後の東京五輪を意識していました。しかし、4年間でどうなっているかは分からない。狙える時は狙っていこうと話をしていました。三浦の東京五輪に対してもワールドランキングの制度があったので、ポイントを加算できるレースは出場させていこうと意識はしていました。結果的にコロナの影響で東京五輪が延期になり、我々にとってはチャンスであり、現実的に狙っていくということで一致しました」
コロナ禍のなか、レースが再開されたのが20年7月のホクレンディスタンスだった。その千歳大会、三浦は3000メートル障害で8分19秒37という日本歴代2位のタイムをマークした。
「春はトラックレースが開催されていなかったので、秋の予選会に向けて距離を増やしていました。しかし、ホクレンが開催されるということで3000メートル障害の練習を少し取り入れました。そうしたらホクレンで記録が出ました。これは今後の取り組みにおいてプラスになりました。距離を踏んだことが3000メートル障害の結果に繋がったこと。やはり、ベースとなる距離をしっかり走ってほしいということと、秋の駅伝への取り組みにマイナスイメージを持つことなく取り組んでもらえるだろうと感じました」
その結果、なんの迷いもなく、三浦は距離を踏むようになり、それが駅伝にも活かされた。そのシーズンの箱根は1区10位だったが、全日本大学駅伝では1区で区間新の走りを見せてチームは総合8位になり、シード権獲得に貢献した。