45歳、上場企業から脱サラ 挑んだ「ラグビー界の超ニッチ」…30人が集まる“スクラム虎の穴”の正体

子どもたちが「輝ける場所」を見つけてほしい
今はオーナー兼指導者としてラグビーアカデミーを切り盛りするペコさんだが、そのバックグラウンドも興味深い。
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ラグビーを始めたのは埼玉・行田工高からだが、父・邦光さんの存在が大きく影響する。北海道・滝川西高から日本体育大に進学。当時大学屈指の強豪で公式戦にも出場すると、卒業後は教員となり埼玉・行田商などでラグビー部監督として選手を育ててきた。
「僕は小中とラグビーをする環境がなかった。なので小学校6年間は野球、中学では陸上部でした。でも当時は体が大きいほうだったこともあって、父からは高校でラグビーをやるために柔道をやれと言われていたんです。で、中学の柔道部をみたら皆太っている。俺も太っているんだと思って、だったら痩せてやると陸上を選んだ。でも結果的に投擲種目をやったので、ずっとスクワットして、こんな(太い)足になっちゃった」
親に反発して陸上を選んだが、結果的にスクラムに必要な足腰を鍛えることに繋がった。進学した行田工は、当時は熊谷工と花園出場を争っていた強豪校。そこからラグビー一筋となったが、不思議な縁がスピアーズ入りという進路を後押しした。
「僕は教員希望で日体大を志望していたが、入試に失敗したんです。でも、浪人してまで大学という思いもなくて就職を考えていた。もう年度末の時期で難しい状況でしたが、当時、埼玉県の高校の試合中継で解説をしていた真下昇さんが、勤めていたクボタに推してくれたんです。真下さんが、行田工監督だった新井(均)先生と同じ筑波大という繋がりもありました」
真下氏は、国内トップレフェリーとして活躍後に、日本ラグビー協会で専務理事を務めた人物だ。日本のW杯招致から2019年の開催まで尽力したラグビー界の重鎮でもある。そんなレジェンドとの試合中継、高校の監督と先輩後輩という縁にも助けられてクボタに入社出来たことが、今に繋がっている。最初に夢見た教員の道こそ断念はしたが、長い現役生活の先に辿り着いたのがアカデミーでの指導者というのも運命を感じさせる。父の影響は大きいが、ペコさんの弟も高校教師になり、長女も教員の道を選ぶなど、教育者一家という血筋が、いまの仕事に影響しているのかも知れない。
その長女も含めた二女一男の子供たちも全員ラグビー経験者だ。長女はラクロスに転向したが、次女・仁那は立正大4年、長男・優悟は明治大2年で、共に父と同じFW第1列でプレーしている。
今は「アカデミー」一期生が社会人になる世代だ。ようやく軌道に乗り始めたPRアカデミーでも“卒業生”が東福岡、石見智翠館、目黒学院など全国大会の常連校に進学している。
「そういう子たちが、今はこのアカデミーに教えに来てくれたりするんです。そうすると、今の生徒たちも喜ぶんです。このアカデミーに、こんな選手がいたんだとね」
教え子たちが強豪校へ進むことも自慢だが、指導を続ける中で大事にしているのは選手たちに「輝ける場所」を見つけてほしいという思いだ。
「とにかく大事にしているのは、生徒たちを楽しませることなんです。子供たちが高校、大学と進学して、いかにハッピーになれるか。そのために、何を身に付ける必要があるかを考えながら教えています。要は、彼らが輝ける場所というのを作ってあげたいです。スクラムは楽しいんだよ、スクラムでも輝けるんだよということを伝えています。だから、スクラムの基本やスキルを身に付けさせて送り出すのが、このアカデミーの使命だと思っています。それで子供だけじゃなくて、親もハッピーになれば、それがゴールじゃないかな」
WTBのようなトライゲッターや司令塔役のSOはゲームでも注目され、脚光を浴びるポジションだ。だが、80分間の試合の中でボールを持つ機会も少ないPRでも楽しめる、ハッピーになれる――そんな思いが、他に類を見ない“虎の穴”開校の大きなモチベーションになっている。その根底にあるのが、大人たちが子供にどう「輝ける場所」を作ってあげられるかだ。
「ウチの長女の話なんですけど、ラグビーを6年間やっていたけれど辞めたんです。その時は『痛いから』と言って、スポーツはやらないと話していた。けれど、今はラクロスをやっているんですね。スポーツって、そこにあるとやっちゃうんですよね。辞めてしまう子は、自分が輝ける場所が何かをわからないだけだと思うんです。でも、競技は違っても、またやり始めてしまう。スポーツって独特の人と人とのコミュニケーションだし、育成には一番持ってこいだとも感じています。誰もが応援してくれるでしょ。だから、子供たち1人ひとりに、もっとそういう場を作ってあげたいなと思いますよね」
PRアカデミーの子供たちがスクラム修行を続ける隣のコートでは、「アライブ」の生徒たちが楽しそうにパス練習や実戦形式のタッチラグビーを続けている。それでも、スクラムに打ち込む選手には、トライゲッターや司令塔にも負けない輝ける場所は必ずある。それを信じて、スクラムを組み、拘り続けるペコさんと愛すべき“太っちょ”たちの挑戦が続く。
(吉田 宏 / Hiroshi Yoshida)
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