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45歳、上場企業から脱サラ 挑んだ「ラグビー界の超ニッチ」…30人が集まる“スクラム虎の穴”の正体

熱心に指導する伊藤代表【写真:吉田宏】
熱心に指導する伊藤代表【写真:吉田宏】

30人が集うPRアカデミー

 2018年に開校した「アライブ・ラグビー・アカデミー」は、いわゆるラグビー全般を教えるスクールだ。スピアーズの拠点である千葉県、そして“ペコ校長”の故郷・埼玉県を中心に、スタート当初の2教室から今春都内に初めて開校した吉祥寺教室を含めて現在7教室、総勢230人の生徒が集まる。そして2年前に念願叶い開校したのが「リアルPRアカデミー」だった。

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 スクラム一筋の職人タイプ――。そんなイメージの現役時代だったペコさんだが、本当にスクラムにハマったのは34歳のとき。予想外の遅咲きだった。

「現役を続けるか引退するかという瀬戸際の年齢だった時に、ニック・スタイルズがスピアーズのコーチに就任したんです。そこで初めてスクラムをちゃんと教えられました。当時のチームには、2列目に赤塚(隆)さん(元日本代表LO)のような重たい選手がいっぱいいて、正直なところ僕らフロントローは姿勢をとるだけでスクラムを押せたんです。でもニックからは、前の3人がしっかりと押すことにフォーカスするようにすごく厳しく言われたんですね。彼もオーストラリアでは決して大きなPRじゃなかった。だからこそ組む時の姿勢、低く組むことの重要さ、体が小さい中でどうすればいいかを教わりました。スクラムを組むことについて、具体的な数字で示されたのも初めてだった」

 スタイルズはオーストラリア代表も経験したPRで、スピアーズでの指導後には古巣クイーンズランド州のスーパーラグビーチーム「レッズ」でもヘッドコーチ(HC)を務めた。コーチとしては、サイズやパワーだけに依存しない合理的で、スクラムを組むためのスキルを重視した指導に手腕を見せた。ペコさんにとっては、現役生活の晩年に出会った“師匠”ではあったが、そこから再びスクラムでの進化を遂げて、本職だったルーズヘッド(左PR)から、押しの強さが求められるタイトヘッド(右PR)も務めて38歳までスクラムを組み続けた。

 そんな晩年での進化と、最後はPRの選手に多い首の神経系の怪我が引退に繋がったことも、若い世代を中心とした“スクラム虎の穴”開校を強く後押ししている。

「いい姿勢でスクラムを組むことの大切さを子供たちに教えられれば、すごくいいなと思っていました。それに、僕の場合は最後は首を怪我してしまった。そうならないように教えられれば、若い時からもっと楽しくスクラムを組めると考えたのも、開校のきっかけでした」

「アライブ・アカデミー」は曜日毎に異なる会場で行われ、ペコさんと共にスピアーズの元同僚らが先生役を務めている。一方のPRアカデミーは、今春の吉祥寺教室のオープンまでは週1回、月曜日の午後7時から北与野で行われてきた。このスクラムに特化したスクールの話を最初に耳にした時は、個人的には果たしてどれくらいの需要があるのかと懐疑的だったが、「最初は15人いたらいいくらい。今は30人ほどが通っている」(伊藤)と、予想以上の盛況に驚かされた。

「中高生で、もう(PRをやると)決めている子も多いんです。例えば高校の体験練習に参加した(PR以外の)中学生が、進学予定の高校の監督からFW第一列をやるように言われて、僕らのところに来たりしています。ウチの息子も高校時代はNo8でしたが、大学(明治大)の監督からPRをやってくれと事前に言われていた。そういう選手が結構いるんです」

 このような高校、大学進学前や所属チーム内でPR転向を目指す選手、既にFW第一列でプレーしている選手、ペコさんがコーチを務めてきた高校、大学などの教え子たちが、この“虎の穴”に集まって来る。自分自身の学生の頃を思い返してみると、10代でここまで自分のポジションを決めて取り組む選手は多くはなかった。ましてやトライや、ボールを持って走るようなプレーとはあまり縁のないPRなら尚更、隙あれば他のポジションに転向したいと思う選手もいたが、この“虎の穴”に集まる恰幅のいいティーンエージャーは、そんな“邪念”はないようだ。

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吉田 宏

サンケイスポーツ紙で1995年からラグビー担当となり、担当記者1人の時代も含めて20年以上に渡り365日欠かさずラグビー情報を掲載し続けた。1996年アトランタ五輪でのサッカー日本代表のブラジル撃破と2015年ラグビーW杯の南アフリカ戦勝利という、歴史に残る番狂わせ2試合を現場記者として取材。2019年4月から、フリーランスのラグビーライターとして取材を続けている。長い担当記者として培った人脈や情報網を生かし、向井昭吾、ジョン・カーワン、エディー・ジョーンズら歴代の日本代表指導者人事などをスクープ。ラグビーW杯は1999、2003、07、11、15、19、23年と7大会連続で取材。

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