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野球医学は「治して終わり」ではない 「野球選手の未来をつくる」再発予防の道

「最近は、保護者の方の課題意識が非常に高い」とスポーツ医療に関する関心の高まりを感じているという【写真:齋藤暁経】
「最近は、保護者の方の課題意識が非常に高い」とスポーツ医療に関する関心の高まりを感じているという【写真:齋藤暁経】

「勝つためには怪我もしょうがない」時代から発展する医学とスポーツ科学

――そこからどのようにしてスポーツ選手を対象とした専門クリニック「ベースボール&スポーツクリニック」を開業するに至ったのでしょうか?

「これまで、スポーツ整形から一般整形へ、一般整形から工学の世界へ、工学の世界から野球の現場へ、そしてコーチング学・スポーツ科学などさまざまな分野へと飛び込んできました。それは、整形外科と異分野の違い、方向性や理論のすれ違いや調整の連続でもありました。

 そして、最後に慶應システムデザインマネジメント(慶應SDM)で『システムデザインマネジメント』という学問に出合って『あ、これまで困っていた複数の分野で新しい解決法を探る方法があるんだ!』とすごく嬉しく思いました。

 システムデザインマネジメントでは、別々の要素の関係性(システム)を理解し、それらを組み合わせて上手く機能するための仕組みをデザインする。そして実行する際のマネジメント方法を考える。このシステムデザインマネジメントという考え方が非常に重要だと感じました。

 この考え方を基に、クリニックから現場に故障した選手をなるべく良い状態で戻そうと思うと、現場のこと、コーチング学、スポーツ心理学含めてひとつの包括的なシステムとしてサービスを提供できるクリニックが必要なのではないかという思いに至り『ベースボール&スポーツクリニック』を開業しました」

――医療と現場の両方を知っている馬見塚先生から見て、現状の問題・課題はどのようなものでしょうか?

「最近は、保護者の方の課題意識が非常に高いですね。怪我をして治療に来られるわけですが、その怪我はコーチング的な問題や生体医工学の知識がないことから問題が起きたという話をすると『なるほど、そうなんですか』と学習しようとしてくれます。私の著書などを用いて勉強される方も増え、保護者の方のリテラシーが高まっていることを感じます

 対して、現場のコーチは、それに応えられるような情報を持ち合わせていないことも多い。そのため保護者の方が指導者批判みたいなことをやってしまう。そんなことを、診療を続けている中で感じています」

――現場にいる指導者の意識と保護者の意識に差があると。

「『勝つためには怪我をするのはしょうがない』。かつての時代はそうでした。しかし、医学もスポーツ科学も発展しています。例えばカナダやオーストラリアでは、『障害なき選手育成』を目指した長期的な選手育成プログラムを取り入れています。

サイエンスやメディカルの発展により、今までは研究で終わっていたものが、選手の育成にも貢献できる時代になってきました。 これはテクノロジーの進歩、新しいソフトウエアの開発、SNSなど個人が情報発信できる手法が発展したこと、そういったもので十分可能になってきたと思います」

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