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W杯でイングランドを倒せるか ラグビー日本代表、大野均が語る“金星”再現の条件

W杯に向けて重要な複数の戦術を持つプラン

 もちろん、現在世界ランキング10位の日本が同5位の強豪を倒すためには、良いシナリオばかりではない。昨秋の日本代表の戦いぶりからは、2023年への課題も浮上してきた。

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「昨年のテストマッチで日本代表はキックを多用していましたが、対戦したオーストラリアにしてもアイルランドにしても、どの選手もハイボールのキャッチングがすごく上手い。向こうにキックをクリーンキャッチされてボールを保持されるのなら、キックはただ相手にボールを渡すだけのプレーになってしまう。よほど相手の捕球やカウンターを崩して、崩してという展開にできないとリスクはあるでしょうね」

 日本代表が、コロナ禍により実戦、練習時間が十分に確保できないなかで精度が不十分だったことも踏まえた上での指摘だが、一方で今季のイングランドを見ると、WTB兼FBに身長196センチの若手フレディー・スチュワードを起用してハイボール対策も講じている。キックを使った戦い方の危険性を考えると、もう一つの選択肢が浮かび上がる。

「日本はキックよりもボールを保持して戦ったほうがいいのではないかと思います。当然チーム内でも考えていると思いますが、W杯へは戦術を2つ、3つと持って臨むことが重要になる。キックを使う戦術と、ボールを自陣からつなぐもの。そして、もう1個くらい戦術のバリエーションがなければ、相手に簡単に分析されてしまう。昨秋はまずキックを積極的に使ってみたということだとは思います。複数の戦術を持つ意図はあるはずです」

 戦術を対戦相手に応じて切り替えるプランは、15年大会、19年大会でも導入されている。昨秋の代表戦ではキックを使った戦術の完成度は不十分だった一方で、代表最多キャップホルダーは、スピード、俊敏さ、組織立ってボールを動かす日本の強みを生かすためには、ボールを保持して攻め続けるスタイルがベースになると考えている。

 スコットランドのトライシーンから日本のアタックの可能性をイメージした大野氏だが、全勝優勝したフランスのプレーからは、イングランドを倒すために日本が身につけてほしい、ささやかだが重要なスキルも見つけ出している。

「前半のフランスのトライシーンです。タッチライン際で選手を余らせて、飛ばしパスで獲ったトライですが、起点となったブレークダウンに注目しました。フランスの選手が、密集の中でイングランドの選手を掴んでいるんです。反則を取られない程度のプレーですが、あれでイングランドのカバーディフェンスが1人遅れたことが、最後に大外でフランスの選手が余っていたことに繋がっているのかという印象でした。ちょっとした狡さですけれど、もしワールドカップで競り合う展開に持ち込めたら、ああいうプレーが効いてくるはずです」

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大野 均

ラグビー元日本代表 
1978年5月6日生まれ、福島県出身。小学生時代から野球を続け、日大進学後にラグビー選手としてのキャリアをスタート。身長192センチの恵まれた体躯を武器に頭角を現すと、卒業後は東芝府中ラグビー部(現・東芝ブレイブルーパス東京)に加入した。日本代表にも2004年から選出され、通算キャップ数「98」は歴代最多。W杯にも07年から3大会連続で出場している。20年に現役を引退し、現在は東芝ブレイブルーパス東京のアンバサダーを務めている。

吉田 宏

サンケイスポーツ紙で1995年からラグビー担当となり、担当記者1人の時代も含めて20年以上に渡り365日欠かさずラグビー情報を掲載し続けた。1996年アトランタ五輪でのサッカー日本代表のブラジル撃破と2015年ラグビーW杯の南アフリカ戦勝利という、歴史に残る番狂わせ2試合を現場記者として取材。2019年4月から、フリーランスのラグビーライターとして取材を続けている。長い担当記者として培った人脈や情報網を生かし、向井昭吾、ジョン・カーワン、エディー・ジョーンズら歴代の日本代表指導者人事などをスクープ。ラグビーW杯は1999、2003、07、11、15、19、23年と7大会連続で取材。

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