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肌が青白く、潤いがない他校の女子「衝撃だった」 違和感から変わった陸上・田中希実の食事管理

田中は栄養の知識が増えたことで食への意識、練習の質と量がアップした【写真:荒川祐史】
田中は栄養の知識が増えたことで食への意識、練習の質と量がアップした【写真:荒川祐史】

「重いだけで怒られるんじゃないか」 心のコンディションに影響した田中の経験

 指導者の行き過ぎた管理などが影響し、無月経、骨粗しょう症、摂食障害、さらには他の精神障害に発展してしまう選手も少なくない。本来なら健康体が代名詞のアスリートのはずなのに。「0.5~1キロ重くなるとバテやすい。なるべく軽くいたい」という田中も、少なからず心のコンディションに影響した時期があった。

「重かったらしんどいというのが刷り込まれているので、高校の時は『重いだけで怒られるんじゃないか』みたいな気持ちがありました。少し重いとその日は憂鬱になったり、イライラしやすくなったり。『ずっと食事をコントロールしないといけない』って。

 ただ、今までの所属チームや関わってくれた人たちがいい意味で緩かった。高校も体重制限や管理はあったけど、そこまで日常的にうるさく言われたり、一日に何回も体重を量ったりするような文化はない。それが良かったと思います」

 受験を控えた高校3年時、面接や論文対策で栄養について勉強した。同志社大スポーツ健康科学部に進み、スポーツ栄養学も受講。知識が増えたことで食への意識がさらに高まっていった。

「高校時代に太っちゃダメと思っていた時は、『油分はダメだから普段は我慢』という考えでした。でも、それぞれの栄養素の役割をしっかり理解し始めたら、『これを摂ることは悪いことじゃない』と思えます。良い部分も知っているからなのか、栄養素として機能している感覚がありました」

8月のパリ五輪5000メートル予選を走り、世界と戦う田中(一番右)【写真:Getty Images】
8月のパリ五輪5000メートル予選を走り、世界と戦う田中(一番右)【写真:Getty Images】

 炭水化物はスタミナに、練習直後の食事は筋肉の回復に。意識するほど繊細な感覚を知れた。「そういう意識で食べるのも凄く大事ですし、意識するためにも知識が必要」。バテにくい、バテてもすぐに回復する。大切な練習が質、量ともにアップした。親や指導者、栄養士に言われたままに箸を動かす人よりも、自分で考えたから成長曲線が変わった。

「人に準備されていたら食事が義務になってしまいますが、自分で選んで食べていたら『このために』と意欲を持って食べられる。変なストレスにはならないです」

 2021年東京五輪は1500メートルで日本人初の8位入賞。22年オレゴン世界陸上は異例の3種目に出場する鉄人ぶりを見せ、23年ブダペスト世界陸上は5000メートルでも8位入賞だった。世界に羽ばたいた今、5種目で日本記録を持つ。

 そんなトップアスリートでも、体重コントロールの小さな失敗はたくさんしてきた。今も毎朝体重計に乗り、摂取量の目安にする。「なるべく軽く」と思っても過度な減量はしない。「体重が落ちないとストレスになるし、増えると憂鬱でバテやすくなる。嫌だけど、それが永遠に続くわけじゃないので、くよくよ考えすぎないように」。大事なのは体重計の数字ではなくパフォーマンスだ。

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