肌が青白く、潤いがない他校の女子「衝撃だった」 違和感から変わった陸上・田中希実の食事管理
食事はネガティブなものじゃない、楽しむものだ。陸上女子中長距離の田中希実(New Balance)が「THE ANSWER」の単独インタビューに応じ、食事への向き合い方を明かした。厳しい体重管理がイメージされるアスリートの世界。行き過ぎた管理で心と体に支障をきたす選手も少なくない。
陸上・田中希実に聞く食と栄養「食事は楽しむもの」
食事はネガティブなものじゃない、楽しむものだ。陸上女子中長距離の田中希実(New Balance)が「THE ANSWER」の単独インタビューに応じ、食事への向き合い方を明かした。厳しい体重管理がイメージされるアスリートの世界。行き過ぎた管理で心と体に支障をきたす選手も少なくない。
一方、田中は「食」を心から楽しんでいる。複数種目で日本記録を持つ最速ランナーの折り合いの付け方とは。小学生時代から現在までの経験を踏まえながら、自発的に栄養への理解を深めることの大切さを説き、部活生と親、指導者にアドバイスを送った。(文=THE ANSWER編集部・浜田 洋平)
◇ ◇ ◇
アルプスの少女ハイジは、美味しそうなチーズパンにかじりついた。ヤギのミルクと一緒に。
小説の世界に食欲をかき立てられた少女は、給食のパンを見て笑う。同じのだ、おいしいな。ちょっとずつ「食」への興味が湧いていった。
25歳になった田中が紐解いてくれたおぼろげな記憶。瓶牛乳も好きになった。半年に1回くらい、小学校の宿題で出たのが塗り絵。摂った食材に合わせ、赤、黄、緑の色をつけていく。バランスの良い食事を続ければヒマワリが完成した。必要な食材の色を考える習慣がついた。
本格的に陸上を始めた中学では、「食べたいものをめっちゃ食べた」とレース前夜でもお構いなし。大きく意識が変わったのが高校時代だ。
毎朝体重を量り、練習日誌に書いて提出するのがルール。一方、食事は各自に任された。「その分、勝つためにはどうすべきか、自分で自然と考えるようになっていった」。自ら最適解を見つける作業。赤、黄、緑の他にタンパク質、炭水化物も。量とバランスを整えた。
「私の中ではけっこう衝撃だった」と脳裏に残るシーンがある。他校との合同合宿。よその選手が揚げ物から衣だけを剥ぎ取っていた。油物は絶対NG、そんな思考からの行動。田中は違和感を覚えた。
「なんかハツラツさがない。肌が青白く、潤いがない感じ。10代の生き生きとした感じがしない。油物を避けて、食事を楽しもうと思っていないんじゃないか」
よく疲労骨折をする選手もいた。その子は中学時代から食事を抜くことが多かった。「成長期にしっかり食べることって大事なんだ」。摂りすぎに注意しつつ、好きな牛乳を飲み、揚げ物は衣の食感まで楽しみながら、全国区の選手に飛躍していった。
「油自体は悪いものではない。エネルギーとして重要だし、避けるとトレーニングに影響があるのでは?と思っていました。体のめぐりも悪くなって、意識して摂った他の栄養も吸収できなくなってしまう」