女性アスリートの自己肯定感が低いのはなぜか 女子サッカーWEリーグが持つ社会的意義
「THE ANSWER」は、競泳の元五輪代表選手で引退後は国連児童基金(ユニセフ)の職員として長く活動している井本直歩子さんの対談連載をスタート。毎回、スポーツ界の要人、選手、指導者、専門家らを迎え、「スポーツとジェンダー」をテーマとして、様々な視点で“これまで”と“これから”を語る。第1回のゲストは日本初の女子プロサッカーリーグ「WEリーグ」初代チェアに就任した岡島喜久子氏。前編では、リーグの行動規範を選手たち自身で作ることになった経緯と狙い、女性アスリートの自己肯定感が低い理由などについて語った。(構成=長島 恭子)
連載第1回「競泳アトランタ五輪代表・井本直歩子×WEリーグ初代チェア岡島喜久子」前編
「THE ANSWER」は、競泳の元五輪代表選手で引退後は国連児童基金(ユニセフ)の職員として長く活動している井本直歩子さんの対談連載をスタート。毎回、スポーツ界の要人、選手、指導者、専門家らを迎え、「スポーツとジェンダー」をテーマとして、様々な視点で“これまで”と“これから”を語る。第1回のゲストは日本初の女子プロサッカーリーグ「WEリーグ」初代チェアに就任した岡島喜久子氏。前編では、リーグの行動規範を選手たち自身で作ることになった経緯と狙い、女性アスリートの自己肯定感が低い理由などについて語った。(構成=長島 恭子)
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井本「今日は、色々と新しい取り組みを打ち出しているWEリーグについてお話をお伺いするのを楽しみにしてきました。
まず理念についてお聞きします。WEリーグでは『女子サッカー・スポーツを通じて、夢や生き方の多様性にあふれ、一人ひとりが輝く社会の実現・発展に貢献する』という理念を掲げています。このように、社会性を前面に押し出されるプロスポーツは世界を見渡しても非常に新しいのではと感じました。どのようにして、この理念が生まれたのでしょうか」
岡島「まずJリーグの影響を受けています。Jリーグは男子のプロサッカーリーグとして93年にスタートしましたが、プロ化にあたり『スポーツを文化にする』というメッセージを打ち出しました。その一つが、『ホームタウン』という考え方です。
チームの拠点を『ホームタウン』とし、地域に根付いたチーム作り、地域にサポーターを育てていくというコンセプトのもと、発展しました。このようなJリーグの歴史から、やはりプロ化をするならば、社会的意義を持ったほうがよいとなりました。
では何を意義とするか。WEリーグは女性のリーグです。元々は男性のスポーツだったサッカーをプレーする女性がこれだけいるんだ、ということが見せられます。そこで、女子のスポーツを通じて日本の社会全体の女性の活性化、エンパワーメントの促進を意義にしようと決まりました。
もう一つ、女子サッカー選手の中には自分がLGBTQであることを公表している選手たちがいます。そのような性の多様性も受け入れ、誰もが様々な夢を描ける社会にしたいという思いから、『夢や生き方の多様性』という言葉を採用しました」
井本「加えて、行動規範として『WEリーガークレド』(『WE PROMISE』※1参照)というものも制定しています。私が驚いたのは、クレドの内容を選手が中心となって作り上げたという点。11チームの選手たちから発信した言葉をまとめ上げるのですから、非常に難しい作業だったと思いますが、外部の広告企業や専門家に頼らず、『選手自身が考える』ことも、元々の理念としてあったのでしょうか」
※1「WE PROMISE」
私たちは、自由に夢や憧れを抱ける未来をつくる。
私たちは、共にワクワクする未来をつくる。
私たちは、互いを尊重し、愛でつながる未来をつくる。
みんなが主人公になるためにプレーする。