五輪4度出場のママが37歳で学生に転身 アスリートの人生も「選択肢は一つじゃなくていい」――バレーボール・荒木絵里香
「THE ANSWER」は3月8日の国際女性デーに合わせ、さまざまな女性アスリートとスポーツの課題にスポットを当てた「THE ANSWER的 国際女性ウィーク」を今年も展開。「スポーツに生きる、わたしたちの今までとこれから」をテーマに1日から8日までアスリートがインタビューに登場し、これまで彼女たちが抱えていた悩みやぶつかった壁を明かし、私たちの社会の未来に向けたメッセージを届ける。4日目はバレーボール日本代表で五輪4大会連続に出場した荒木絵里香さんが登場する。
THE ANSWER的 国際女性ウィーク4日目「女性アスリートのライフプラン」荒木絵里香インタビュー後編
「THE ANSWER」は3月8日の国際女性デーに合わせ、さまざまな女性アスリートとスポーツの課題にスポットを当てた「THE ANSWER的 国際女性ウィーク」を今年も展開。「スポーツに生きる、わたしたちの今までとこれから」をテーマに1日から8日までアスリートがインタビューに登場し、これまで彼女たちが抱えていた悩みやぶつかった壁を明かし、私たちの社会の未来に向けたメッセージを届ける。4日目はバレーボール日本代表で五輪4大会連続に出場した荒木絵里香さんが登場する。
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テーマは「女性アスリートのライフプラン」。生き方の多様化が進み、さまざまな人生設計ができる現代社会。荒木さんはスポーツ界において、それを象徴するようなキャリアだ。海外挑戦も経験した現役時代、結婚・出産を経て、バレーボール界の第一線で長年活躍。2021年東京五輪を最後に引退した後は、大学院に通い始めた。後編では大学院進学を決断した理由、女性アスリートのライフプラン構築の課題について思うことを明かした。(取材・文=THE ANSWER編集部・神原 英彰)
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2021年東京五輪を最後に引退した荒木絵里香さんが踏み出した一歩は「大学院」だった。
現在は早稲田大学大学院スポーツ科学研究科のエリートコーチングコースに通う1年生。「もう授業はほとんど対面ですね。1限の時は小学校がある娘より早く家を出ています(笑)」。自宅のある千葉から東京・東伏見まで片道2時間かけて通い、学びの日々を送る。
成徳学園(現・下北沢成徳)で全国3冠を達成した高校時代、進学の希望があった。しかし、日本代表に近い実力もあり、より高いレベルを求めて実業団入り。早大ラグビー部出身の父、体育教師の母から「大学はまたいつでも行ける」と言われたことも大きかった。
ただ、結婚・出産を経て、五輪4大会に出場しても“学び直し”の想いは薄れることがなかった。
バレーボール界の先輩である吉原知子さん、多治見麻子さんが大学院に進学。「こういう選択肢があるんだ」と知り、いつかは自分も……と姿を重ねた。現役引退から半年、「今までバレーボールの現場でしか社会の経験も知識もない。大学院に進学して研究し、次のステップに進んでいきたい」とセカンドキャリアの第一歩に選んだ。
早大でバレーボール部の監督を務める松井泰二教授のゼミを志願。研究テーマに「ブロック」を掲げた。Vリーグで8度のブロック賞を受賞した代名詞に、学術的にアプローチすることを目標に志望動機、研究計画を提出。面接を経て、2022年4月、37歳で学生になった。
瞬発的動作の「ブロック」も経験やセンスで片づけてしまえばそれまで。「選手時代に“暗黙知”として言語化できず、人に伝えられなかったものを“形式知”として言語化し、誰かに伝えられる形にしていきたい」。言語化力が単に研究のみならず、社会生活やビジネスの場で汎用されるのは言うまでもない。
「でも、本当にゼロからのスタートでした。私自身、大学も行っていないし、いきなり大学院となっても、パソコンすらバレーボールの映像を見ることでしか使ったことがありませんでした。書類を書いたり資料を作ったり、ましてプレゼンしたりなんて今までの人生になかったことなので……」
エリートコーチングコースに在籍しているのは、年齢も競技も異なる5人。一緒に学ぶ中で多様な価値観に触れる。
社会というくくりで見れば、スポーツの一競技の世界は広くない。「この競技はこういうことが常識なんだ、こういうことが問題なのかと知ることができて、すごく勉強になります。バレーボールの何が良い点だったのか、問題だったのかを客観的に見ながら学べることが日々新鮮ですね」と充実した毎日だ。