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ブラインドサッカーと“声の力” 日本代表の緻密な指示と研ぎ澄まされる空間認知力

耳が情報源となるブラインドサッカー(視覚障がい者サッカー/略称ブラサカ)では、試合中の指示が重要な意味を持つ。  例えば、唯一GKには資格制限がないので、せっかく地元開催のパラリンピックに臨むなら、プロの最高レベルの選手を起用すれば、と考えがちだ。だがGKの役割は、シュートストップだけではない。

日本らしい戦術や“声の力”で研ぎ澄まされる空間認知力があると語る中川氏(右)【写真:日本ブラインドサッカー協会/鰐部春雄】
日本らしい戦術や“声の力”で研ぎ澄まされる空間認知力があると語る中川氏(右)【写真:日本ブラインドサッカー協会/鰐部春雄】

【ブラインドサッカー日本代表コーチの挑戦|第2回】相手ゴール裏で指示を出す「ガイド」やGKが担う役割

 耳が情報源となるブラインドサッカー(視覚障がい者サッカー/略称ブラサカ)では、試合中の指示が重要な意味を持つ。

 例えば、唯一GKには資格制限がないので、せっかく地元開催のパラリンピックに臨むなら、プロの最高レベルの選手を起用すれば、と考えがちだ。だがGKの役割は、シュートストップだけではない。

 ブラインドサッカー日本代表で、主に戦術や技術についての指導をしている中川英治コーチが言う。

「GKの動ける範囲は、縦2m×横5mに制限されています。またピッチを縦に三分割した場合、守備側の3分の1(ディフェンシブ・サード)で指示を出してフィールドプレーヤーを動かすのもGKの仕事になります」

 因みに、中央の3分の1は監督が、攻撃時の3分の1については、ガイド(コーラー)と呼ばれるコーチが相手ゴール裏に立ち、指示を出している。

「ブラインドサッカーのGKにとって、何より大切なのはフィールドプレーヤーとのコミュニケーションなので、彼らとの信頼関係を築けていることが大前提になります。またサッカー経験を持ち、後天的に視覚を失った選手と、先天的に見えない選手では、プレーの特徴やキックのタイミングも異なります。先天的に見えない選手は、テイクバックがなく、いきなりキックして来るし、当たり損ねて予測のつかないほうにシュートが飛ぶケースもある。だからサッカーの名GKを連れて来ても、即座に対応できるとは限らないんです。実際にJリーグで豊富な経験を持ち、年齢別日本代表歴を持つ榎本達也選手が代表で活動していた時期もありますが、すべてスタメンだったわけではありません」

 現在、日本代表ではピッチを縦に4分割、横に3分割して、それぞれの位置を番号で区分けし指示を出している。中川は、相手ゴール裏で指示を出すガイドを務めている。

「ほとんどの選手が、今、自分が何番の位置にいるかは把握しています。だから僕も、選手の今の位置を教えるのではなく『○番が空いているぞ』などと使えるスペースを教えています。パスを受ける選手に情報を与えて、次のプレーの決断スピードを上げる手助けをしているわけです」

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加部 究

1958年生まれ。大学卒業後、スポーツ新聞社に勤めるが86年メキシコW杯を観戦するために3年で退社。その後フリーランスのスポーツライターに転身し、W杯は7回現地取材した。育成年代にも造詣が深く、多くの指導者と親交が深い。指導者、選手ら約150人にロングインタビューを実施。長男は元Jリーガーの加部未蘭。最近、選手主体のボトムアップ方式で部活に取り組む堀越高校サッカー部のノンフィクション『毎日の部活が高校生活一番の宝物』(竹書房)を上梓。『日本サッカー戦記~青銅の時代から新世紀へ』『サッカー通訳戦記』『それでも「美談」になる高校サッカーの非常識』(いずれもカンゼン)、『大和魂のモダンサッカー』『サッカー移民』(ともに双葉社)、『祝祭』(小学館文庫)など著書多数。

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