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なぜ日本は世界を驚愕させられたのか 「240日」という時間が作った完成度

日本の完成度から生まれたアイルランド戦での福岡のトライ

 多くの印象的なトライを残した日本代表だが、アイルランド戦後半19分のトライも、組織として完成度の差をみせている。最後は左サイドを快足WTB福岡堅樹が飛び込んで奪ったものだが。福岡にラストパスをしたCTBラファエレ・ティモシーは、ほぼ福岡を目視していない状態で放っている。


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 このパスに関して福岡は「ティム(ラファエリ)がパスをもらった時点で、絶対に放ってくれると信じていた。あうんの呼吸です。僕は走り抜けるだけだった」と誇らしげに語っている。ラグビーの場合、セットプレーから一発で取りきる以外は、ほとんど練習と同じ状態でトライを取ることはない。だが、ジェイミー・ジャパンは豊富な強化時間を使い、あのノールックパスからトライを決めるパターンも何度も練習してきたはずだ。

 練習してきたプレーでも、相手からの重圧がかかる中では精度が落ちるのが当たり前だが、アイルランド防御が必死の思いで襲い掛かってきたあの状況で、ラファエレがノールックで最高のパスを放り、受ける福岡もパスがどこに来るかを信じトップスピードでインゴールに飛び込んでいる。トライの起点となるスクラムが、相手が自陣ゴール前というデンジャラスゾーンでの不用意なアクシデンタルオフサイドを犯してのものだということを考えると、チームとしての完成度の明暗を分けたシーンでもあった。

 スコットランド戦でオフロードパス3本をつないだPR稲垣啓太の印象的なトライも、明確に仕込まれた動きの先で生まれたものだ。稲垣は試合後に「あそこで自分がトライできなくてもよかった。ラックになれば自分もそこに入り、ボールを生かしていた」と語っている。あれだけの距離をボールが動いた位置に、スクラムが重責のPRがサポートランしていること自体が驚くべきことだが、ジェイミー・ジャパンではそれは決まり事の1つ。稲垣は、偶然ではなく当然のプレーとしてボールを追い、冷静な判断をしていたのだ。

“時間”“完成度”という言葉を使ったが、より具体的にいえば、他国では準備されていない領域までも、日本代表は準備してワールドカップに臨んでいたのだ。この準備をするために、他国と比べて圧倒的なアドバンテージとなったのが強化時間の長さだった。

One Team をスローガンにしたジェイミー・ジャパンだが、その言葉は精神的な団結や一体感を示しただけではなく、まさに1つのチームとして機能する戦術面での意味も込められているのだ。

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吉田 宏

サンケイスポーツ紙で1995年からラグビー担当となり、担当記者1人の時代も含めて20年以上に渡り365日欠かさずラグビー情報を掲載し続けた。1996年アトランタ五輪でのサッカー日本代表のブラジル撃破と2015年ラグビーW杯の南アフリカ戦勝利という、歴史に残る番狂わせ2試合を現場記者として取材。2019年4月から、フリーランスのラグビーライターとして取材を続けている。長い担当記者として培った人脈や情報網を生かし、向井昭吾、ジョン・カーワン、エディー・ジョーンズら歴代の日本代表指導者人事などをスクープ。ラグビーW杯は1999、2003、07、11、15、19、23年と7大会連続で取材。

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