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「自分が空手界を盛り上げないと」 強行出場で涙、5年ぶりのV逸で震えた植草歩の唇

東京五輪で新採用される空手の全日本選手権男女個人戦が8日、群馬・高崎市の高崎アリーナで行われ、女子組手68キロ超級で2016年世界選手権金メダルの植草歩(JAL)が5連覇を逃し、銀メダルに終わった。体重無差別で行われる日本一決定戦。決勝で23歳の齊藤綾夏(AGP)に4-6で敗れ、大粒の涙を流した。海外遠征から帰国直後の強行出場となった裏には、大きな理由があった。

表彰式で涙を流す植草歩(左)右は優勝した齊藤綾夏【写真:浜田洋平】
表彰式で涙を流す植草歩(左)右は優勝した齊藤綾夏【写真:浜田洋平】

4連覇中の植草歩が女王陥落、帰国直後に強行出場「自分が出ることで注目を」

 東京五輪で新採用される空手の全日本選手権男女個人戦が8日、群馬・高崎市の高崎アリーナで行われ、女子組手68キロ超級で2016年世界選手権金メダルの植草歩(JAL)が5連覇を逃し、銀メダルに終わった。体重無差別で行われる日本一決定戦。決勝で23歳の齊藤綾夏(AGP)に4-6で敗れ、大粒の涙を流した。海外遠征から帰国直後の強行出場となった裏には、大きな理由があった。


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 勝ちパターンだった。植草は開始1分ほどでポイント先取。「いつもの勝つ流れ。勝てるな」。普段の練習で対峙しても、常に優位に立てる相手だっただけに勝利までの道筋が見えていた。しかし、約20秒後に天地はひっくり返る。突きを打った後、相手がクリンチ気味に飛び込んできた。すると、そこから頭部に蹴りを入れられた。上段への蹴りは3ポイント。形勢逆転となった。

 落ち着いて取り返そうと、得意の中段突きで1点ずつ返す。だが、時間の進みが早い。次第に精度を欠き、逆にカウンターでポイントを献上した。敗戦まで残り10秒。「ラスト1秒まで何があるかわからない」。互いに高速連打を繰り出したが、有効打とは認められなかった。

 呆然と周囲を見渡す。勝者は喜びを爆発させ、相手応援団が沸いていた。女王陥落。コートを降り、関係者に肩を叩かれても涙を出さずに引き揚げた。

 表彰式の直前まで後輩らと笑顔で会話を交わし、気丈に振る舞った。5年ぶりに真ん中から一歩ずれた表彰台。上がる直前、帝京大の香川政夫師範に声をかけられた。「疲れただろう」。こらえていた涙が溢れ出した。「怒られると思ったけど、あんなに優しいことを言われて止まらなかった」。勝者に拍手を送りつつ、両手で涙を拭った。

「全日本はいつも自分にとって大きな変化を与えてくれた場所。この負けも五輪で優勝するために重要な機会だと思っている。ここで腐る選手じゃない。この悔しさを味わったからこそ、東京五輪で優勝できると思ってやりたい」

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